ウィザードレディー (Page 5)
「え?」
突然、道をふさがれて、女性は驚く。
月光が照らすソレは、人間ではなかった。
人間の形をしている。だが、人間とは異なるもの。
身長は2メートルを超えている。筋骨隆々という言葉が似合う体格だ。
全身の肌の色は、闇を凝縮したような黒……漆黒。
眼は血でも吸ったかのように真っ赤だ。
そして頭には一対のツノがあり、背中にはコウモリのものを思わせる翼が生えていた。
ソレを見た者は、ひょっとしたら同じ言葉を思い浮かべるかもしれない。
悪魔という言葉を。
ソレはまさに人ならざる存在、悪魔であった。
悪魔は鉤爪が生えている手を片方、女性へと伸ばす。悪魔を前にした女性は、恐怖で動けない。
鉤爪が女性の胸を引き裂く。血が飛沫(しぶき)となって、路面を赤く染めていった。
悪魔は引き裂いた胸から心臓をえぐり取る。
人間の心臓、それは悪魔になってご馳走だ。
悪魔がえぐり取ったばかりの心臓をかじったとき、
「光よ、撃ち抜け!」
という女の声が響いた。
光の槍が悪魔に向かって飛ぶ。
悪魔は咄嗟(とっさ)に左手を突き出す。左手のひらの前に闇が生じ、楯のようになる。
闇の楯が、光の槍を防ぐ。闇の楯も、光の槍も、同時に消滅した。
悪魔は光の槍が飛んできた方に顔を向ける。
そこに立っているのは神楽であった。
「光よ、撃ち抜け!」
神楽は光の槍を連続して悪魔に向かって放つ。
放った光の槍はすべて闇の闇の楯で防がれ、神楽は舌打ちする。
「魔術師か」
悪魔は神楽を睨みながら言う。
神楽は
「そうよ」
と悪魔を睨み返しながら応える。
「私は魔術師よ。ここ最近起きている殺人事件、その犯人はあんたのようね」
胸を裂かれ、心臓をえぐり取られた女性の死体を見る神楽。
女性は顔に恐怖の表情を浮かべて事切れていた。
「だったら、なんだ?」
「あんたを倒すっ!」
光の槍を放つ神楽。悪魔はまた闇の楯を作る。
神楽は指を動かす。すると、その動きに合わせるように、まっすぐ飛んでいた光の槍はコースを変えた。
「なにっ!?」
闇の楯を避けるように飛ぶ光の槍。
光の槍は悪魔の肩に直撃する。
「ぐあっ!」
悪魔の巨体が揺らぐ。
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