アプリ不倫

・作

夫の浮気に辟易した深田奈央は、自分も思い切ってマッチングアプリで浮気することを決めた。当日、現れた男は奈央の好みではないものの清潔感があって穏やかそうな男だった。浩二と名乗るその男は、他にもセフレがいる慣れた男だが、特別ハンサムではない浩二がどうして何人もの女とセフレ関係を続けていられるのか、奈央はホテルで時間をかけて思い知らされることになるのだった。

深田奈央がその日マッチングアプリで知り合った男と待ち合わせをしたのは、自宅の最寄駅から5つほど離れた駅の、人通りが少ない方の改札口だった。
結婚しているのにマッチングアプリを使って男と会おうと思ったのは、度重なる夫の浮気にほとほと嫌気がさしたからである。

結婚して5年、交際時からあった浮気癖が結婚すれば少しはおさまるものと奈央は期待したが、それはとんでもない間違いだった。
夫の昌樹はマッチングアプリを使って多くの女性と関係を持ち、結婚2年目辺りからはそれを隠すことすらしなくなっていた。

はじめは昌樹のスマホを見て証拠を掴んでは問い詰めていたが、同じことを何度も繰り返すうちに、奈央も止めさせようという気力が削がれていった。
夫婦仲は冷え切っており、2人の間にはまだ子供もなかったが、大手企業で昇進街道を進む昌樹は離婚で世間体が悪くなることを嫌い、別れたがらないのだった。

奈央はまだ20代の若さでありながら女として愛されなくなったことを惨めに感じていたし、離婚を真剣に考えたこともある。
しかし渋る昌樹を押し切ってまで別れようとしないのは、奈央の方にも婚姻を継続するメリットがそれなりにはあったからだ。

 

 

奈央が自分も浮気をしようと思ったのは、夫の昌樹への仕返しをしてやりたい、裏切られる辛さを思い知らせてみたいという復讐心があったためだが、実はそれだけが理由ではなかった。
浮気を繰り返す昌樹に嫌悪感を抱いた奈央が夜を拒否するようになったことで2人は深刻なセックスレスになっていたのだ。

昌樹は妻を抱かずとも外で発散しているが、奈央は昌樹を拒むとセックス自体をしなくなり、自分の性欲を持て余すようになってしまった。

 

 

待ち合わせをしたのは平日の午前中だった。昌樹の仕事中、かつパートタイムで働く奈央が休みを取れるのはその時間帯しかなかったためだが、今回会おうとしている男はこの時間の指定にも快く応じてくれた。

アプリのプロフィールによればこれから来る男は浩二という名で、年齢は30代前半、フリーランスで仕事をしているということだった。写真の雰囲気は優男といった印象で、色白の薄顔は悪く言えば少し弱々しい感じがあった。
奈央は夫のような濃くはっきりした顔立ちが好みだったのでこの相手を良く思った訳ではないが、こちらの都合に合わせてくれるというので決めた。

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