愛する妻を触手でぐちゃぐちゃにした話
台風の中、車での帰宅途中に事故を起こした俺は、気が付いた時には自分の家の風呂場にいた。そこに入って来たのは、傷ひとつない愛する妻、真奈美だった。彼女は僅かな違和感を覚えたようだが俺の存在に気付くことなく身体を洗い始め、その指が自らの秘部を弄り始めた。俺の名を呼びながら達してしまった彼女に、俺は堪らず手を伸ばす。
ぴちゃ、ぴちゃぴちゃ、ぴちょん。
水の滴る音が響く。
薄暗い浴室の中で、俺はじっと佇んでいた。
不意に腹の底に響くブンッという音が響き、熱い流れが湯船の中の液体を引き寄せる。
業火に晒されて一気に温度が上がり、舞い戻って冷たい液体と混ざり合う。
熱い。寒い。
俺はなぜここにいるのか?
台風の中で車を運転していた。
もう少しで家に着くというところでガードレールを突き破り、湖に突っ込んだ。
その後が曖昧なままだ。
真奈美との結婚祝いは、どうすればいいんだろう?
*****
「……うん、大丈夫だよ」
『あのねえ、真奈美。もうその家にいる理由はないのよ。会社も遠いし、不便だし、天気が悪いと危ないし』
電話の向こうの母親が、心の底から心配そうな声をあげた。
真奈美はそれに乾いた笑いを返し、また「大丈夫」と繰り返す。
「ここがなくなると、ヒデくんが帰ってくるとこがなくなっちゃうじゃん」
真奈美は口を尖らせて答えた。
湖の底から引き上げられた車には誰も乗っていなかったんだから、彼はどこかで生きてるんだ。
『何言ってるの。もう一周忌も過ぎたんだから。相手の親御さんも心配してくれてるのよ。いい加減にしないと、あんたも三十路過ぎてーー』
「はいはい。あ、お風呂沸いたから入るね」
『あっ、待ちなさい真奈美! あんたーー』
真奈美は口喧しい母親の声から耳を背け、終話ボタンを押した。
静かな室内に、ピーピーピーと電子音が鳴り響いている。
*****
ここは見慣れた俺の家の風呂場だ。お風呂が沸いたことを知らせてくれる音が、妙に心地よい。
一体俺は、ここで何をしているのだろうか?
そんなことを考えていると、ガララと浴室のドアが開いた。
浴室の少しばかり薄暗い灯りが、柔らかく艷やかな姿を浮かび上がらせる。
胸と尻は控えめだが女性らしい丸みを帯びており、きゅっと引き締まった腰や細くて長い手足は理想的なモデル体型だ。
そんな痩せ型の体型も相まって少し冷たく見えるクールビューティだが、その滑らかな肌に指を這わせるだけで熱い吐息を漏らしてキスを求めてくる情熱的な女性だ。
俺は思わず声をあげた。
『真奈美』
しかし浴室の中に音が響くことはなく、ただ水が揺れる音がしただけだ。
彼女は僅かに眉を顰めただけで、何も気付かない。
細めの眉をやや八の字に緩め長い睫毛を伏せがちにした真奈美は、疲れたような溜め息を吐いてかけ湯をした。
レビューを書く