青い薔薇の密猟者はその棘に気付かない (Page 5)

「それで辞めたの?」

「もっと自分のためになる市場があるはずだ」

 グラスに残った酒を三枝は一気に流し込んだ。喉を焼くアルコールは最初よりもかなり薄まり、心地良い程度になっている。

「君は、これからどうする?」

「どうって……」

「次はどうやって、稼ぐのかって話だよ」

「どうしよっかなー、転職先も決まってないんだよね」

 女はカウンターに突っ伏してしまう。軽くその背中を三枝が撫でるが、嫌がる様子はない。

 そのまま二人はだらだらと喋り、杯を重ねた。

「お客さん、そろそろ閉店ですので」

 店主がグラスを棚に戻しながら、申し訳なさそうに告げる。

 二人はそれを契機にスツールが立ち上がったが、女がよろけた。それを咄嗟に三枝が受け止めてやると、彼女は照れ臭そうに笑いながら体を離した。

 その表情を見て、三枝はこの女も手懐けたと確信する。

 警戒は解け、ある程度の距離まで詰められたようだ。アルコールによる判断力の低下もある。醒めてしまわないうちに連れて行ってしまうべきだ。

 三枝は酒が回っている女に肩を貸し、夜の町を歩く。

 あちこちで二人と同じような酔客がふらふらと闊歩している。飲み屋の立ち並ぶ一角を通り抜け、ホテル街へと三枝は足を進めた。

「ごめん、ちょっと休憩」

 女が三枝の腕から抜け出し、路上にしゃがみ込んでしまった。吐くのと思ったが、その気配はない。とろんとした目付きで今にも眠ってしまいそうだ。

 予定とは少し違うが、三枝は手近なホテルに入ることに決めた。女の方は殆ど状況を理解していないのか、成すがままである。少し抵抗された方が好みだが、彼はこの状況を受け入れることにした。

 安っぽいラブホテルの一室に入り、ベッドに女の身体を投げ出す。彼女は意識を手放しかけている。緩やかな吐息は眠っている時のそれに近く、身体はすっかり脱力していた。

 一旦ベッドから離れた三枝はネクタイを緩め、スーツをソファの上に脱ぎ捨てた。万が一のことを考え、女から少し距離のある場所に脱ぎたかったのである。無用の心配だとは思うが、用心するに越したことはないだろう。スラックスも同様にソファに引っ掛けるようにしておいた。背広だけ独立していては不審がられるかもしれない。

 全裸になった三枝はベッドを振り返る。相変わらず女は規則正しい呼吸を繰り返すだけで、起き上がる気配はない。

 呼吸に合わせ上下している形の良い胸に触れる。下着越しでもその張りと柔らかさが分かった。

 ブラウスのボタンを外して前を開け、ブラジャーを緩めてずらす。少々小ぶりだが、形のよい乳房の頂点で桜色の突起が彼を誘う。

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