青い薔薇の剪定者は昔日の面影を纏う (Page 2)

「ここから、どうやって移動するんですか? バスか何か?」

「あ、いや、私が車で案内します」

 穏やかな低い声で俊倫に問われ、従業員がほっとした様子で先導を始める。

 駅前にある小さな駐車場に停めてある旅館の名前入りの自動車へ案内された二人は、さらに山奥へと連れていかれた。

 民家などは周囲になく、細く曲がりくねった道の終点にあったのは古めかしい旅館だった。

 俊倫と睦実は客室に案内され、荷物を置くと早速窓を開け放つ。都会とは吹き込んでくる風の匂いすら違う。どこからか鳥の鳴き声が聞こえてくる。

 紅葉にはまだ早いらしい山並みを眺めていると、俊倫の隣で睦実がぽつりと言った。

「今日はありがとう。俊倫君」

「……親父もこんな感じの方が喜ぶさ」

「そうだといいけれど」

「自分の命日に湿っぽくされのは、嫌がるだろさ」

 寂し気に微笑む睦実の横顔を見て、少しばかり俊倫は明るい声を作って提案する。

「散歩は親父とした?」

「ええ。旅館の周りを少し」

「せっかくだから、俺も歩いてみようかな」

「じゃあ、一緒に行きましょうか」

 二人は連れ立って旅館を出た。

 旅館の周囲は散策できるように整備されており、里山のようになっているのが分かった。せせらぎの近くまで行くことができるらしく、おっかなびっくり俊倫と睦実は斜面を下っていく。

「ねえ、訊いてもいい?」

「何を?」

 睦実に手を貸しながら俊倫は素っ気なく答える。

「家を出て、何をしていたの?」

「気になる?」

「俊和さんは好きにさせなさいって言っていたけど」

「へえ、親父がそんなことをね。別に喧嘩別れしたってわけでもないし、そんなもんか」

「でも、心配はしていたのよ」

「あちこち、ふらついてたよ」

「今は?」

「カフェで働いてる」

「カフェ……?」

 きょとんとした顔で睦実が言った。

 川の流れの傍まで下りたことをきっかけに俊倫は睦実から手を離した。彼の手の中には指輪の冷たい感触が取り残される。その感触を強いて無視して、俊倫は睦実に背を向けた。

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