僕だけのアイドル (Page 4)
美桜は去年までみるくちゃんだった。
テレビに出るようなアイドルグループでもなく、地方のアイドル。
高校生の時にたまたま大きな街に買い物しに行こうと二人で出かけた時に、声をかけられた。
その時はまだ付き合ってもいない、本当にただの友達。
でも、幼馴染だったから付き合いは長かった。
スカウトの人に声をかけられ、嫌そうにしている美桜の横で絢人はもし美桜が芸能人になったらアイドルと近付けるな、なんて本当に下心のみだった。
学校行きたいし、面倒だし、興味無いし。
そんな言葉で断る理由を挙げる美桜を説得したのは絢人だ。
短い間だけでも、面白いじゃん。
経験だけしとくのも、楽しいだろ。
そんな言葉を繰り返し、渋々といった様子だったがなんとか美桜をアイドルにした。
みるくちゃんの名付け親も絢人だった。
始めたからには、と美桜はアイドル業に真剣に取り組んだ。
どんな風にすれば、ファンが喜んでくれるのか。
また、本当にアイドルになりたくなった子達に刺激も受けた。
もちろん勧めた手前、絢人は美桜を応援した。
何度行ってもなかなか埋まらない会場。
そんな中でもキラキラと愛想を振りまくアイドルたち。
最初は下心だけだったが、その内に絢人も純粋に応援していた。
美桜の容姿はグループの上の方だった。
ダンスは運動神経の良さとリズム感でなかなか良かった。
歌も上手かった。
だけど、アイドルとしての華のようなものは感じられなかった。
美桜も気付いていたのだろう。
やっぱり向いていないのだと結局一年ほどで卒業した。
そして、卒業後、付き合い始めた。
勧めた手前、ではなく一生懸命アイドルに取り組む美桜に惹かれたから。
そして、告白した時に美桜はずっと前から絢人が好きだったから、アイドルになったのだと知った。
その瞬間、美桜を一生大事にしようと決めた。
「色が白いからみるくちゃんって……ふふ、なにそれって思ったよ」
「はは、でも本当だろ。美桜色白くて、胸も大きいし」
「……すけべ。でも、まぁ、いいけど」
「それに可愛いって思っていたし、俺の中では一番の推しだったんだよな」
「今は」
「今は、美桜。二番目がみるくちゃん」
「これからも、みるくちゃんでオナるの」
「そりゃ、みるくちゃん可愛いからね」
「永遠にみるくちゃんは抱けないのに」
「だからこれからも、いろんな物を試してみるくちゃんのオマンコを探さないといけない」
真剣な口調の絢人に美桜はジト目になる。
「……こんなに可愛い彼女がいるのに?」
「それは、別腹」
なにそれ、と美桜が吹き出す。
「私、会社では結構人気あるんだよ。芸能界は無理だったけど、会社ではアイドル的存在なんだよ」
にんまりと笑みをつくり、絢人にもっと可愛がれと強請る。
「まー…別腹にはたっぷり注いだから、美桜にも俺のミルク注がないとな」
「全然面白くない」
「面白さはどうでもいいだろ、愛だろ、愛」
絢人の言葉に、美桜は目をパチパチと瞬かせる。
そして、呆れたような表情をした後、笑う。
「なに、それ」
そう言って美桜はもう黙ってといわんばかりに、キスで絢人の口を封じた。
(了)
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