僕と妹の灼熱(あつ)い夏休み (Page 2)
今から10年前――
僕は親父に連れられて、この家にやって来た。親父がお義母さんと再婚したのだ。舞華はお義母さんの連れ子で、僕とは血のつながりは無い。だが、僕ら兄妹はこの10年、とても仲良く過ごした。僕が東京の大学への進学が決まってひとり暮らしすることになった時、舞華は「イヤだ!!」と泣き叫んだものだった。
「親父やお義母さんとは仲良くやってるかい?」
「うん! でも、やっぱりお兄ちゃんがいないと寂しいよ……」
そう言うと、舞華はうつむいて黙り込んだ。その横顔を見て、僕は美しいと思った。僕はその横顔を、しばしボーッと見ていた。すると舞華が
「お兄ちゃん、どうしたの?」
「ううん。別に何でもないよ……」
舞華は「ふ~ん」と言った。この夏休みは、舞華と1週間しか一緒にいられないのか。何かいい思い出を作ってやらなきゃな――
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♪ドンドンドン! チキチッチ! ドドンドドン~♪
僕と舞華は、一緒に夏祭りに行った。一緒に夏祭りに行くのは何年ぶりだろう? 舞華がまだ小学生の頃だったような気がする。
「なあ、舞華?」
「何? お兄ちゃん?」
「舞華には彼氏っていないのか?」
舞華は伏せ目がちに言った。
「うん、いないの……好きな人はいるんだけどね?……」
「そうか……舞華のほうから告白はしないの?」
「……してもいいんどけど……ね?」
そう言って舞華はウインクをした。僕は「そうか」とうなづき、
「来年は好きな人と一緒に夏祭りに行けたらいいな」
と言った。すると舞華は小さく首を横に振り、
「ううん、いいの。もう望みは叶ったから……」
と答えた。僕は怪訝そうな顔をしてしまったが、
「それならいいんだ」
そう答えておいた。浴衣の襟から覗く舞華の白いうなじは、提灯の灯りに照らされて艶っぽく、僕の心は思わずそそられてしまった――
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