愛液はオシッコにまみれて -Born to be Wild!- (Page 2)
“俄かキャンパー”に水を提供した!
順平はバツイチ独身で39歳、動画の企画・撮影・編集の仕事をしている。
もともとは3代続く写真館の跡取りなのだが、技術の進歩と簡略化のお陰で経営は停滞。自身は跡を継ぐまでという約束で出版社の写真部にいたのだが、こちらもデジカメのあおりで辞めてしまったのだった。
かといって、「今さら堅気のサラリーマンが勤まるわけはない」と模索していたところ、それまでもバイト程度にこなしていた“動画部門”を独立させて、現在に至っているというわけだ。社内起業というヤツだった。
記念写真は、これまで通りに社長の実父にまかせて、結婚式やお宮参り、初節句などの行事のオプションで動画の依頼があった時だけは出動。あとは現在の本業になったYou〇ubeのチャンネルごとの撮影や編集・企画までも請け負っているのである。
これは、カメラマン時代のコネとクチコミによるところが大きく影響している。「どう転ぶか分かんねぇモノだな」と、順平はつくづく思っていた。
それに、一般に広くキャンプがブームになっているのも順平には追い風だった。
芸人の「ヒ〇シです」のソロキャンプのYou〇ubeチャンネルがウケているのを受けて、類似番組が多数作られるようになったのである。
この動きが、大きく順平を変えたのである。
大学時代に廃車寸前の三菱ジープを5万円で譲り受けて以来、コツコツと仕上げていった順平は、そのジープを駆って近辺の山間部に入っては、ソロキャンプをしていたのだ。
その経験が生かされて、番組制作のオファーが入るようになったのだ。
ただし、順平のソロキャンプは独特で「四駆ありき」のものだ。キャンプ場でBBQをしたり、穴場を探して渓流釣りをするものではない。かえって、釣りをする人には気を遣って近づかないようにしているくらいだった。
ちょっと河原が広くなった場所を見つけては、砂利や石、岩を避けたり乗り上げたりしながらジープから屋根を張って、テーブルとイスだけを用意をしてひたすら川を見ているのである。
コーヒーを淹れたり、本を読んだりしながら、ただ「それだけ」だ…。
そんなやり方は、40歳近くになってクルマがV6パジェロ(パジェロZRショート。2000年製)になっても変わらなかった。
地元の商店で買った食材で飯を作って、食い、少しだけ酒を飲んで、寝る。もちろん、最近は日帰りが多い。
川のせせらぎを聴きながらの午睡は、何とも言えずに至福のひとときを与えてくれているのだった。
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