文筆家の戯れ (Page 5)
「ふー…うぅ…ん、あ、いっちゃう…」
「我慢して?」
「…うぁ…や…無理、ああ…!」
「メイクも崩れてくしゃくしゃですね。よく見せてください」
「!やっ、やだ、見ないで…はぅ、んん…!」
まじまじと顔を見られ、改めて恥ずかしくなるけど、顔を作っている余裕なんてない。
「…あ…ダメ待って…何かきちゃう、ああ、お兄ちゃぁん…!」
「もう限界?イきたい?」
「うんっ、イきたぃ…はぁー…、あ…あ…イっ…イってもいい…?」
「うーん…」
いいですよ、と言って、お兄ちゃんは浅く速く腰を動かした。
「…っ―――…!」
…ああ、ヤバい。
ベッドについた太腿は痙攣し、瞼の裏がちかちか点滅する。
「あぁ…う…はぁ、はぁ、はぁ…」
お兄ちゃんの胸にしがみついて息を整えていると、相変わらず冷たい手が優しく頭を撫でてくれた。
「大丈夫?」
「…う…うん…あのね、お兄ちゃん…」
まだ繋がっている部分がじんわり熱くて、物足りない。
「…おかわり、してもいい…?」
「月が綺麗ですね」
散歩の途中、眩しいくらいの満月を見上げ、お兄ちゃんはそう言った。
「あ、何だか告白したみたいになってしまいました。すみません」
「?…こく、はく…?」
私は意味が分からなくて、お兄ちゃんにしがみつきながら聞き返す。
「ええ、夏目漱石にそんな逸話があって」
「そう…なんだ…」
「彼は英語の先生をしていたんですけど、その時の教え子が」
「…う、うん…はぁ…っ…」
ゆっくり歩いているだけなのに、体を縛る縄が股間に食い込んで、うまく足に力が入らない。
「や、待って、あ、だめ」
「”I love you”の訳を―――」
イきそうになって立ち止まろうとした私の腕を、お兄ちゃんが引っ張る。
「んんっ…!」
突然の強い刺激に、私は軽くイってしまい、へなへなと地面に座り込んだ。
立ち上がれずにうずくまっていると、コートのボタンを外されて裸の胸が露わになる。
「お兄…ちゃん…?やだ、見えちゃう…」
「人の話も聞かずに、一人で楽しんでいたお仕置きです。今度勝手にイったら、公園まで全裸で歩かせますよ?」
「…はぃ…」
「じゃあ、行きましょうか」
文学とか芸術とか、難しいことはよく分からない。
ただ、憧れの『時雨先生』に可愛がってもらえるのが嬉しくて、私は立ち上がるために差し出された手をぎゅっと握った。
(了)
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