義母のなぐさめ

・作

久しぶりに実家に帰った吉岡賢太郎が、あまりに長い義母の入浴を心配して風呂場に行くと、義母は自分をなぐさめていた。幼い頃から恋焦がれた義母の百合の痴態に興奮した賢太郎は、隠し続けた欲望を我慢できずにぶつけてしまう。1年前に夫が他界し、若く豊かな体を持て余していた百合。最初は拒絶するものの、本当は求めていた快楽に蕩けてしまうのだった。

その日、吉岡賢太郎が久しぶりに実家を訪れたのは、近くに出張したついでだった。
1年前に父が他界してから義母は広い家に一人暮らしをしている。久しぶりに一緒に夕食でもと前日に連絡をすると、喜んでくれた。

予定より2時間ほど早く仕事が終わったため約束より随分早い時間に家に着いた。食事の準備がまだ出来ていなくても、待てばいいだけだから構わないかと玄関の扉を開ける賢太郎の鼻腔を、懐かしい匂いがくすぐる。
義母の作る煮込みハンバーグの匂いだ。

 

父が義母と再婚すると決めた時、賢太郎は15歳だった。その5年前に賢太郎の母親である妻が病気で亡くなってから生きる気力をすっかり失っていた父が、義母と出会った頃から少しずつ笑顔を取り戻していったことを幼心にはっきりと賢太郎は覚えていた。
だから父が幸せになるなら、父の再婚も喜んでやりたいと思ったのだ。

しかし再婚相手として紹介された女性が父より自分と歳が近いような若い人だったことにはさすがに面食らった。
義母となった百合は、当時まだ24歳だった。

 

「ただいまー」

賢太郎が声をかけるも、中から応答はなかった。通常ならすぐに出迎えてくれる義母が出てこない。

「出掛けてるのかな…」

賢太郎は家の中に入る。料理の匂いに誘われてリビングに行ってみたが、リビングから繋がったキッチンにも人はいなかった。

「…母さん?」

キッチンのコンロの上には、大きな鍋にたっぷりと入った煮込みハンバーグがすっかり出来上がっていて、早めに準備をしていてくれたことに賢太郎は頬を緩める。
煮込みハンバーグは、賢太郎の好物だった。

 

百合は若く、美しい女性だった。大きな二重の目尻は垂れており、いつでも口角の上がった口元と合わせて地顔が笑顔に見える人だった。
そしてぱっと見のイメージと違わず、本当によく笑った。
父がこの女性に惹かれたのも、再婚してから本当に幸せそうに過ごしていたのも賢太郎には理解できる。

しかし、15歳の賢太郎は父の再婚に拗ねるほど子供ではなかったが、母として無邪気に百合と接するには大人になりすぎていた。
つまり思春期の少年には、美しい義母は刺激の強すぎる存在だったのだ。

 

トイレにでも行ったのだろうか、と賢太郎は思った。家に鍵はかかっていたが、出掛けたような形跡はない。

ここで待とうと脱いだアウターをソファーにかけ、テレビをつけようとリモコンに手をかけた時、賢太郎の耳にわずかな水音が聞こえた。

耳を澄ますと、サァー、とシャワーの音がする。

「あぁ、風呂か…風呂?」

まだ夕方で、風呂に入るには早い時間のような気がしたが、早めに食事の支度ができたので先に済ませようと考えたのかもしれなかった。

賢太郎は少し心臓が高鳴ったのをわざと無視して、テレビをつけて音を大きくした。
いずれにしてもここで待っていればいいだけだ。
ソファーに深く腰掛け、ネクタイを緩めた。

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