官能空想遊歩 (Page 4)
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かくん、と首が落ち、高坂は目を覚ました。
いつの間にやら眠っていたらしい。
変な姿勢で居眠りをしたせいか、妙に体が固まっていた。
淫夢とでもいうべきものを見ていたらしい。断片的過ぎてネタとして広げるのは難しそうだ。
コキコキと首を鳴らし、高坂は店内にある時計を見る。眠っていたのは五分程だったようだ。店内の様子に変わりはなく、相変わらず女店長と青年がカウンター内でお喋りをしている。
先程よりも二人の距離が近いように感じた。そして、店長の顔に赤みがさしているような……。
いかんいかん、と高坂は肩を回して眠気を追い払う。
空想と現実が混ざってしまっている。
喫茶店に留まっていてもよいネタは出ないかもしれない。
高坂は会計をして、喫茶店を出た。
ふと振り返った店内は外に比べて薄暗く、異界のようだった。その奥で二つの影が重なったように見えたが、気のせいだろう。
高坂はネタを探しながら駅へと歩いていく。
アンテナを張り巡らせ、気になるもの、違和感を探しながら歩くのは日常的なことで、職業病かもしれない。自分の取り入れた知識や経験だけで書き続けられるほど文筆業は甘くない。常に周囲からネタを拾い集めていなくては枯渇してしまう。
オフィス街らしく行き交うのは仕事中らしい男女で、スーツ姿やオフィスカジュアルが殆どだ。
ふと、先輩後輩らしい男女が目についた。
年上の女性にリードされる展開もありだな、と高坂はその男女を目で追う。
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