官能空想遊歩 (Page 3)

 せっかくだからこの経験をネタにできないだろうか。

 しかし、どうやって官能小説に繋げるか。

 思わず眉間に皴が寄る。

 考え込む時の癖で彼は頬杖を突き、じぃっと虚空を見つめた。

 家庭に問題があり、手料理に嫌悪感を持つヒロインに料理人の主人公が食べることの喜びを与えるという筋書きはどうだろうか。

「だめ、かなぁ」

 頬杖をやめ、高坂は頭を掻いた。

 嫌いな題材ではないが、官能小説というジャンルにどう仕立てるのか難しいのだ。

 食欲と性欲は結び付くかもしれないが、官能描写に到達する前の紙幅を割き過ぎると読者が飽きてしまう。官能小説は官能描写と登場人物のドラマ部分の兼ね合いが非常に難しい。

 大家と呼ばれる官能小説家はこれらの問題をクリアし、小説しても非常に読み応えがあるものを生み出してきた。

 理想ばかり高くなってしまっていけない。

 高坂は頭を振って、無駄に高くなった脳内の理想図を崩した。

 さっさと事に及ぶ、という意味で安易に凌辱シュチエーションは使いたくない。そもそも凌辱ものは競合が多過ぎて、勝負にならないだろう。

「うぅむ」

 高坂は唸り、腕組みをして目を閉じた。

*****

 妻とはまるで違う舌使いだ。

 口の吸いこむ力で強引に扱くのではなく、ねっとりと陰茎に舌を這わせ、男の急所を刺激する。亀頭の裏側から鈴口まで舌先でくすぐるように弄られ、男根がぱんぱんに膨れ上がった。

 唇、口腔、舌。それぞれが別種の刺激で男に格別な快楽を提供する。

「相変わらず上手だ」

 男が囁き、脚の間にある女の頭を撫でた。

 女は上目遣いに男を睨む。それでも歯を立てるような蛮行には及ばない。ただ口での愛撫を続け、刺激を強くする。一刻も早く行為を終わらせたいのだろう。

 男は寂しげに微笑み、女の口から陰茎を引き抜いた。

 ぬらぬらと唾液で濡れたグロテスクな男根を鼻先に突きつけられる格好になった女は、一瞬蕩けるような顔になったが、すぐに理性を取り戻す。

「次は俺がするよ」

 両脇の下に手を差し入れ、男は女の体を軽々と持ち上げる。彼女は抵抗する素振りを見せたが、本気では内容だった。

 男は先ほどまで自分が腰かけていた椅子に女を座らせ、今度は自ら女の股間へと顔を埋める。大きく足を開かせると、スカートの中身が露わになった。

 むっとするような牝の香りが鼻先に押し寄せる。

 男は焦らすように女の内腿に口付け、ゆっくりと舌を根元へと滑らせた。

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