民宿の一夜 (Page 4)

「僕でよければ、今夜だけでも旦那さんだと思ってくださいよ」

「え…」

「美味しい葡萄をご馳走になったお礼です…一晩だけ慰めさせてもらえませんか」

「…」

瞳を潤ませ、頬を紅潮させて絵美は敦を見つめた。

あんな言葉が口をついて出たのは、敦の下半身を熱くする欲望が絵美を見ているとどんどん湧いてくるからだった。
拒絶されてもこちらは客だという強みもあるため、その時は笑って誤魔化しても良かったが、何故だかいけるような気もしていた。

「…甘えちゃってもいいですか、西村様の優しさに」

絵美は立ち上がって、一歩敦の方に近づいた。

*****

敦が宿泊する部屋に2人で上がった。
部屋の戸を閉めると、もう待ちきれないというように2人は唇を合わせた。

「…っ、んん…」

絵美の唇に吸い付くように口付けて、すぐに舌を彼女の口内に差し入れた。
そして敦は先ほどまで食べていた葡萄の汁を含んだ甘い唾液を味わうように舌を蠢かせた。

「ふぅ…んっ」

少し苦しげに、しかし敦に応じるように舌を動かして絵美は甘い吐息を漏らした。

敦は絵美の身体を抱きしめる腕に少し力を込めて、ちゅっちゅっと啄むようなキスに切り替えて絵美の表情を覗き込んだ。

絵美はうっとりと蕩けた瞳でぼんやりこちらを見ている。本当に死んだ夫を思い出しているようだった。

ちゅ、ちゅと小さなキスを続けながら絵美を布団の方に誘導した。
彼女を布団に横たえて、敦は自分が着ていた浴衣をはだけさせるように一息に脱いで下着一枚の状態になった。
もどかしげに脱いだ浴衣を布団の上から投げ置いて、絵美を見る。
民宿の主人としての仕事をするためだろう、カジュアルなTシャツにデニム姿の絵美の洋服にそっと手をかけると、絵美は「恥ずかしい」と笑って言った。

「電気、消しません?せめて…」

蛍光灯が煌々とついている下ではさすがに雰囲気が出ないかと、敦は立ち上がって部屋の電灯のスイッチを調節しに入り口に向かった。それでも真っ暗にしてしまうのは勿体無いと思ったので、常夜灯をつけておくことにした。

そうして布団の方を振り返ると、掛け布団をかぶって絵美がもぞもぞと動いているのが暗がりでも見えた。
着ていたものがその外にひとつずつ出てくるのを見て、そこで絵美が自分で脱いでいるのだとわかる。
敦が布団に着いた時には下着も含めてすっかり全部が布団の外に出ており、掛け布団をはげばそこには全裸の彼女がいるのだと思うと、その想像だけで敦は下半身に血が集まるのを感じた。

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