セフレ以上恋人未満 (Page 2)

「今日もヤる?」

 屈託のない笑顔で、高島ミナが訊いた。
 俺はギョッとして周囲を確認する。
 幸い、居酒屋の店内はざわついていて誰も聞いていない。
 正面に座る彼女はキラキラとした黒い瞳で俺を見つめ、1つしかない答えを待っている。
 小鼻の小さな低い鼻と薄いピンク色の唇が、彼女のアーモンド型の瞳を余計に大きく見せるので吸い込まれてしまいそうだ。
 ただのTシャツにジーンズというラフ過ぎる可愛げのない服装が、逆に彼女の細い腰や柔らかそうな胸を強調してくれていた。
 赤みを帯びたブラウンに染められたシャギーショートが揺れ、その奥の耳が少し赤らんでいるのが見える。

「あのね、ミナちゃん。そんなこと気安く聞くもんじゃないでしょ?」

「ははは、もう、いつからこんなことしてると思ってんの? ったく、いい加減、コウ君も彼女つくればいいのに」

「ミナちゃんだって、独りだろ」

「コウ君が他の誰かを乱暴しないようにするのが、私の務めみたいなもんだからねえ」

「人をレイプ魔みたいに言わないで」

「え? ……あんなことするのは、私にだけ?」

「こらこら。人聞きの悪いこと言わないで」

「あはは。誰も聞いてないじゃん。……で、コウ君ち、今日も行った方がいい? 食事だけじゃないよね?」

「……ん、まあ」

「ほら、やっぱり。……けだもの」

 彼女は勝ち誇ったように笑うと、目の前のグラスを一気に煽った。
 少し赤みを帯びた首元に、俺がプレゼントした小さなネックレスがくすんだ光を放つ。
 俺は少しドキリとして、自分のグラスに目を落とした。
 彼女は、あのネックレスをどんなつもりで受け取ったのだろうか?

「んじゃあ、行こっか。へへへ」

 彼女が差し出した手に、俺はそっと代償を手渡した。

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