生イキ盛り

・作

会社員の鉄生(てつお)と大学生の綾香(あやか)は家が隣同士。家族ぐるみの付き合いもしていて、綾香が小さな頃はいつだって鉄生にべったりだった。しかし、そんな綾香の態度が急変し今では鉄生を見ると生意気な態度を取り続けている。昔のように仲良くなることはないのだろうと思っていた鉄生。だが、ある日用事で綾香の家に行くも返事がない。いるはずなのに、と不思議に思う鉄生は綾香の部屋を覗く。すると、まさか綾香がオナニーしている現場に遭遇するなんてー…。

「テツ兄はなにやるにもおっそいな!」

バン、と背中を思い切り叩かれ、耳元で大声で叫ばれた。
耳が痛いと抑える鉄生(てつお)に対して、綾香(あやか)はケラケラと笑う。

「綾香、お前さぁ」

「だって、テツ兄が悪いじゃん。そんなところでトロトロ歩いてるから、私が危ないよって教えてあげたんでしょ?」

はぁ?と呆れと怒りが、混じった声を出した後、鉄生は黙る。

「なに?何も言えないの?12歳も年下の私に、何も言えないの。ふーん、そう。そんなんだから、彼女出来ないんだよ」

 鉄生の様子に、ふふん、と嘲笑ってみせる綾香に鉄生は何も言わないまま歩きだす。

「……そうやって逃げるからさ、彼女出来ないんだよ」

同じことを繰り返す綾香を無視して鉄生は家に入って行った。

 

鉄生と綾香は家が隣同士で家族ぐるみの付き合いだった。
12歳も離れているから、昔は鉄生の後ろをちょこまかと付いて回っていた。

『てつおおにーちゃんのおよめさんさんになってあげる』

考えてみれば昔から生意気だったと鉄生は思うが、今よりはずっと可愛げがあった。
鉄生おにーちゃん、と甘えた声でいつも傍で遊んでいた。
それが変わったのはいつだったのか。
確か鉄生が18歳の頃だったか。
急にツンケンした態度になり、可愛らしく甘い声で呼んでいた「鉄生おにーちゃん」から「テツ兄」に変わっていた。
理由を訊いても鉄生に答える必要はないとそっぽを向く。
反抗期なのか、と思ったがそれは終わることなく14年も続いていた。

「あいつももう20なのに、まだ反抗期か」

あれは反抗期というよりは自分を八つ当たりの相手として丁度いいとでも思っているのだろう。
憂さ晴らし。
そんな扱いになってしまのかと思うと、鉄生も気は晴れないが仕方ないかと取り合わないようになっていた。
そうやって14年の月日が流れていた。

 

ふと気付けばテーブルの上に、紙袋が置いてある。
メモは鉄生宛で「果物をたくさんもらったから、隣に持って行ってね」と母の文字が並んでいた。
先程の綾香の態度を思うとため息しか出ないが、仕方ないかと紙袋を持ち家を出た。
チャイムを鳴らすも誰も出ない。
両親が共働きのため、今の時間は綾香しかいなかった。
先程そこにいたけどな、とドアノブを回せばカチャリと開く。

「綾香―」

名前を呼ぶも出てこない。
お互いの家はよく出入りしていたため、勝手に上がりキッチンに紙袋を置く。

「綾香―」

もう一度呼んでみるも、矢張り出てこない。
このまま帰っても良いが、一応声だけかけていくかと綾香の部屋へと向かった。

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