おまえの母ちゃん (Page 4)

「もちろんです」

「ありがとう!」

遠慮されるかと思ったが、恵は案外すんなり家に翼を入れた。
翼は飲料が入った箱を持って案内されるまま玄関から家に入り、キッチンまでそれを運ぶ。

「本当に助かったわ」

「いえ」

平静を装っているが、翼はこの状況にさっきから心臓がばくばくと高鳴っている。

「良かったらお茶でも飲んで行く?お菓子が余っちゃってるの」

思わぬ誘いに翼は緊張しながらも、少しでも長く恵と話していられるならと承諾した。

「いいんですか?えっと…じゃぁ」

「良かった、じゃぁ準備するから座ってて」

リビングのソファーを指して、恵は言った。

「はい」

室内の電気を点けて着ていた上着を脱ぐと、恵は手早くお湯を沸かし始めた。

「つい癖で、作りすぎちゃうのよね…もう涼太もいないのに」

少し寂しそうに呟きながら、恵はいそいそと手作りのクッキーを皿に並べる。

「お、お母さんのお菓子本当美味しかったです…いつも涼太の家に遊びに来るとそれが楽しみで…」

翼は、恵のことをなんと呼べばいいのか改めて考えるとわからなくなって、結局「お母さん」という言葉を使った。

「ありがとう、そんなお世辞も言えるようになったの?」

「お世辞じゃないですよ!売ってるお菓子より俺は好きでした」

「嬉しいなぁ、あ、本当にたくさんあるからお家にも持って帰ってね?今日お世話になったお礼に」

明るい声で話しながら、恵はお茶とクッキーの乗ったお盆を持ってリビングにやってきた。

「ありがとうございます」

改めてエプロン姿の恵を見ると、翼はあの頃の強烈なときめきと欲望を思い出す。
外で上着を着ていた時には気づかなかったが、恵は下に薄手のニットワンピースを着ていて、その胸元は大きく開いて深い谷間がのぞいていた。
それは恵の身体の肉感を主張するようにぴったりとしたニットで、翼は思わず目をそらす。
このままでは我を失ってしまいそうだった。

「いただきます」

「めしあがれ」

クッキーをひとつ手に取って、ねじ込むように口に入れた。
口の中に広がる甘味に、緊張のためか唾液が追いつかず翼は慌てて紅茶にも手を伸ばした。

「あっ…」

淹れたての紅茶は熱く、翼は驚いた拍子にその紅茶を少しだけこぼしてしまった。

「あらっ、大丈夫?」

シャツの胸元にほんの少しお茶がこぼれただけだが、恵はすぐに立ち上がって、ダイニングに置いた自分のバッグからハンカチを持って戻ってきた.
ソファーの横に座って、ハンカチで翼のシャツの濡れた部分を押さえる。

「大丈夫です、すみません…」

されるがままになりながら、翼は密着する恵の身体の感触に頭がくらくらした。
無意識なのか押し付けられた乳房はふわふわと柔らかく、しかしずっしりとした重みもあった。
ずっと触ってみたかったあのおっぱいが、目の前にある。翼の理性は崩壊寸前だった。

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