再会の夜に (Page 2)
「この後、どうする?良かったらもう1軒行かない?」
陽子があっけらかんとした態度で尋ねたのは、同窓会が終わって店を出たタイミングだった。
「ああ、いいけど」
短く答えた達也は、まじまじと陽子の全身を見た。
同級生の陽子は、当たり前だが自分と同じように歳を重ねていて、30代の今はところどころ昔より肉付きが良くなっていた。
「じゃ、タクシー拾うね」
少し先を歩く陽子の尻を見ながら、達也はかつて自分が何度もその尻を撫で回し、欲望を打ち付けていた記憶を思い起こした。
その頃より豊かになり、また柔らかくもなったであろう尻を見つめていると、むくむくと湧いてくる情欲を抑えることが難しくなる。
「陽子」
「ん?」
呼びかけると、陽子が振り返る。
「今日、何時に帰らないといけない?」
達也は思い切ってこう尋ねた。
すると、みるみるうちに陽子の顔が赤くなる。
「たっちゃん」
陽子に「何時に帰るか」と尋ねるのは、2人が肉体関係を持っていた頃、達也が陽子を抱きたい時に必ずしていた質問で、2人のセックスの合図だった。
「・・・何時でもいい、よ」
陽子が「6時」や「8時」など具体的な答えをする時はセックスしてもよいという意味で、セックスしたくない、或いはできない日には「もうすぐ帰る」と答えていた。
そして「何時でもいい」と陽子が答える時、それは陽子もまた達也とセックスがしたいという意思表示だった。
久しぶりの再会だったがわかる。
陽子の瞳は濡れており、完全にスイッチが入っていた。
タクシーでホテルに向かう間、どちらからともなく指を絡ませた。
地元の中心からやや離れたシティホテルに着き、部屋に向かう時には既に、たまらず2人は体を寄り添わせていた。
互いが、互いを求めていることがはっきりとわかる。
相手や自分の配偶者に対する罪悪感が、達也の胸には不思議とかすめもしなかった。
陽子を抱ける、そのことだけに頭が支配されていたのだ。
ホテルの部屋に入るとすぐ、陽子の方から達也に抱きついてきた。
「たっちゃん、久しぶり」
達也の胸に顔を埋めて、陽子はため息混じりに言った。
「たっちゃんと話してたら、あの頃のこと思い出しちゃって・・・どうしようもなくなっちゃった」
こちらの顔を見ずに話し続ける陽子。
達也は洋子の体に腕を回し、小柄な洋子の肩に自分の顔を寄せた。
「俺も・・・俺も思い出してた」
達也が低く囁くと、陽子ははじかれたように顔を上げ、達也の目を見た。
「本当?たっちゃんは、忘れちゃったかなと思ってた」
「なんで?陽子とのあんなエロいセックスを忘れるわけないだろ」
「っ…」
陽子は顔を真っ赤にしている。
「誰と付き合っても、結婚したって、陽子とのセックスが一番良かったって思ってる」
初めてのセックス、そして相手を変えずに数年は定期的にセックスし続けた相手だ。
一番良かったと思うのは仕方ないだろう。
部屋のドアのすぐ内側で、2人は少しの間じっと抱き合っていた。
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