親友の妹で童貞を卒業した話

・作

大学生の沢松は、友人同士の会話の中で童貞であるという話をしてしまう。その中で親友である高橋が、ある提案を持ち掛けてきた。それは、自分の妹を抱いてみないかという耳を疑うような提案だった。事情もあるということで、一先ず引き受けた沢松だったが、流石に親友の妹を抱くつもりはなかった。なかったのだが……。

「だから、抱かせてやるって言ってんの。俺の妹」

俺は耳を疑った。
親友である高橋の口から、そんな言葉が出るなんて思ってもみなかったのだ。

話の発端は、好きなAV女優は誰かという話からだった。
友人数人で集まり、お気に入りの動画の話をしたり、先日オカズにした女優名を上げていた時だった。

「なあ、沢松はもう童貞卒業したん?」

そんな質問をされ、俺は恥ずかしながら首を横に振った。
あー、などと友人たちの口から納得の言葉が零れる。

「なんかそんな気してたわ」
「童貞っぽいんだよな」
「彼女にできそうな女、いないの?」

もちろん、俺にそんなあてはない。
だからこそこうして大学の隅っこで、男数人で集まってくだらない話に興じているのだ。
そして午後の講義が始まる前、それぞれの場所へ移動を始めた時に俺と同じ授業を受ける予定だった高橋が言った。

「なあ、沢松。お前の童貞卒業、手伝ってやろうか」

高橋は大学に入ってからの付き合いだが、性格がすごく合うので一気に仲良くなった奴だ。
数少ない親友といえる男から、耳を疑うような言葉が出たのは次の瞬間だった。

「俺の妹、抱かせてやるよ」

何を言ってんだと思った。
そもそも高橋に妹がいるなんて初めて聞いた。

「お前……マジで言ってんの?」

「マジだよ。沢松だからこそ言ってんの」

俺だからこそ、という言葉になんとなく優越感を感じ、俺たちは教授の話を半分聞き流しながら、静かに会話を続けていた。

「ちょっと金が必要なんだわ。それで俺の信頼できる野郎にだけ声をかけて、妹に体張ってもらってんだ」

高橋は、いつでもヘラヘラとしている気のいいやつだが、両親が不仲だと聞いている。
離婚も間もなくだろうという話は聞いていたが、親は二人とも高橋に対しての当たりが厳しいらしい。
なんとなくだけど、妹さんに対してもそうなんだろうなと思った。

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