ウィザードレディー (Page 2)
「光よ、撃ち抜け!」
力のある言葉に反応し、彼女の右の手のひらから光の槍が飛んだ。
その光の槍は男の体に直撃し、吹き飛ばす。
神楽が放った光の槍で吹き飛ばされた男は床に落ち、派手に転がり、壁にぶつかってようやく止まった。
他の男たちは、その男が死んだと思った。しかし、生きていた。気を失っているだけだ。
神楽は威力を低下させて光の槍を放った。その気になれば壁も砕けるが、威力を低下させて放つことも可能だ。
神楽や男が放った光の槍……それは魔術によるもの。
魔術と呼ばれる超常の力によるもの。
神楽も、灰色のローブの男たちも、その魔術を自在に操る者……魔術師と呼ばれる存在であった。
「悪魔の召喚なんかさせないわよ」
そう告げる神楽を、残った男たちが包囲した。
男たちは魔術師であるのと同時に、悪魔崇拝者でもある。
女性を生け贄に悪魔を召喚しようとしており、それを神楽が邪魔したのだ。
「返り討ちにしてやる!」
リーダー格らしい者が言うと、灰色のローブの男たちが神楽を攻撃する。
ある男は蛇がのたくったような剣で神楽を斬ろうとし、ある男は魔術を神楽に向かって放つ。
包囲しての攻撃。リーダー格である男は、召喚の儀式を邪魔した神楽を仕留めることができると思った。
だが、そうはならなかった。
神楽は振り下ろされた剣をヒョイヒョイと避け、飛んできた攻撃魔術は光の楯ですべて防いだ。
複数の攻撃を、簡単にいなした神楽。すぐに反撃に転じる。
剣を振ってきた相手には強烈な蹴りを叩き込み、攻撃魔術……光の槍を飛ばしてきた相手には、お返しとばかりに光の槍を飛ばし返した。
蹴りを食らった男たち、光の槍の直撃を食らった男たちはバタバタと倒れ、意識を失う。
気がつけば、立っているのはリーダー格である男だけとなっていた。
「後は、あんただけよ」
神楽の強さにリーダー格である男は驚く。
10人近くいた手下が、あっさりと負けるとは想像もしなかったことだ。
「お、おのれえっ!」
リーダー格の男は攻撃魔術……光の槍を連続して神楽に放つ。
神楽はある光の槍はヒョイッと避け、ある光の槍は防御魔術である光の楯で防ぐ。
リーダー格の男の攻撃は、神楽には当たらない。
だが神楽の攻撃は、
「光よ、撃ち抜け!」
リーダー格の男に当たった。
光の槍の直撃を受け、吹き飛ぶ男。床に落ち、そのまま意識を失う。
灰色のローブの男たちをすべて倒した神楽は、生け贄にされそうだった女性の体を拘束している鎖を外す。
「すぐに警察が……っと、来たわね」
赤い光……パトランプの光が見えた。サイレンの音も聞こえる。
「警察に保護してもらって。ここで見たこと話してもいいけど、多分、誰も信じない」
魔術は存在する。それを使う者、魔術師も存在する。
しかし、それを知っているのは一部の人間だけ。
多くの人間は、魔術の存在など信じない。
だが、それでも魔術は確かに存在する。
神楽はガラスのない窓に走った。
「あ、あなた、誰なの?」
生け贄にされそうだった女性は神楽に問う。
問われた神楽は、
「通りすがりの魔術師よ。覚えておかなくていいわ」
そう告げて、窓から外に出た。
神楽が姿を消した後、廃墟と化している建物の中に警察が飛び込んでくる。
女性は警察に保護され、男たちは逮捕された。
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