秘密のサービス (Page 3)

「またお越しいただけて嬉しいです」

寧々が施術台にうつ伏せに寝ると、上から巧の穏やかな声が降ってきた。

「ええ、あの…」

前回の気まずさがあって、巧への応答がぎこちなくなってしまう。

「ひとりでやってる店ですから、リピートしていただけるお客様が大事なんです」

「…」

「特に宮本様のようなお綺麗な方だと、緊張もしますが僕個人としてはとても…」

「そんな…」

「あ、いえ…では施術始めていきますね」

前回は、巧はほとんど無駄な会話をせずに集中して施術してくれていた。
こんな会話も前回はなかったのだが、営業的なサービストークにしては少し熱を帯びているように寧々は感じた。
そうであることを期待したのかもしれない。

*****

1度目の施術の際、寧々はすっかり身体を火照らせて感じていたのだが、巧はほとんど無言で丁寧にマッサージだけして終わった。
アダルトビデオのように、乳房や局部を触れられてそのまま行為に至ってしまうのかという想像が膨らんだ寧々はそうならなかったことに安堵して落胆した。

「よろしければ次回の予約、していかれませんか?」

最低限の営業を受けてすんなり予約したのは、恥ずかしさや気まずさを上回る期待が湧き起こってしまったからだろう。
この施術師は自分に危害を加えてこない存在であり、しかもまた来れば同じような気持ちよさを得られるかもしれないという期待だ。
燻る欲望を癒してほしいという願いもあった。

*****

温かいオイルが背中にとろっと垂らされて、マッサージが始まった。
前回と違って、今回は寧々が最初から少し興奮した状態のため、オイルが触れた瞬間背筋がぞくっとした。

優しい手つきで、巧が背中を撫でる。オイルを伸ばすようにゆっくりと動かす。
気持ちよくて鳥肌が立ちそうになるのを悟られないよう、うつ伏せの寧々は下唇を噛んだ。

「旦那様はお幸せですね」

「え?」

背中の感覚に集中していた寧々は、話しかけられたことに驚いて少し掠れた声で聞き返した。

「いえ、こんなにお美しい奥様で、旦那様が羨ましいなと思って」

「そんなこと…」

話しながらも、巧は手を動かし続ける。
マッサージ部位は、背中からふくらはぎに移っていた。

「でも、お世辞でも嬉しいです…夫とはあまりうまくいっていないから」

「お世辞じゃないですよ!本当に宮本様はお美しいです、肌も吸い付くように滑らかで…」

寧々は、今日はいやに饒舌だなと思ったが、サービスだとしても褒められるのは嬉しい。
触られ方にも、少し熱が込もっているように感じる。

「正直に申し上げると、エステ的なものは必要ないほどです…こんなこと、エステティシャンが言うべきではないんですが」

「ふふふ」

苦笑いで言う巧がなんだか可愛らしくて、寧々も笑い声を漏らした。

「でも…やっぱり若い頃からすると太ったりしてるんです」

「そうなんですか?太ってるなんてとんでもない…健康的で、現状が宮本様のベストな美しさだと思いますよ」

「ありがとうございます…」

太ももを、押さえつけるような強めの力で揉みほぐされながら優しい言葉をかけられて、性的な部分だけではなく寧々の心も満たされていった。

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