一目惚れの終末 (Page 2)
それからなんとなく気が合ったわたしたちは、二週間に一回ほどのペースで会うようになった。人形のように綺麗だけれどお高く留まっていない蘭子のくしゃっと笑う顔を見るたびに、胸が締め付けられるような気がした。
同性を好きになったことなんてなかった。だから、蘭子だから好きになったのか、他の女性のことも好きになれるのかはわからない。
蘭子に対する気持ちが恋愛感情であることに気がついてしまってからは、友達だと思って接してくれている蘭子に対して下心を持っている自分が気持ち悪くて、彼女にも申し訳なくて、蘭子から誘われても断ることが増えていった。
二回連続で彼女の誘いを断って、さすがに三回目は断れずに受け入れた。ビアガーデンに行った後に、コンビニで缶チューハイを買って、公園のベンチに座って彼女と話をした。
「千紗は、わたしのことが嫌いなの?」
「嫌いじゃないよ」
「でも、最近わたしのこと避けてない?」
わたしと目を合わせずに、蘭子は言った。蘭子にしては鋭い声色だった。
「避けてなんかないよ……」
「そうかな。千紗、わたしが気持ち悪い?」
「どうして」
「わたしが千紗のこと、好きだって気付いちゃったんでしょ?友達に対する感情じゃないって、わたしが千紗に、キスとかしたいって思ってるって、気が付いたんじゃないの?」
両手で蘭子の薄い肩を掴み、無理やりこちらを向かせた。
「蘭子、わたしも同じこと、思ってたよ」
蘭子の身体を抱き締める。この歳になると、同性よりも異性と抱き合う機会の方が多く、女の子のことを抱き締めるのは久しぶりだった。筋肉の少ない柔らかな感触だとか、自分と同じくらいの小さくて細い身体だとか、新鮮な抱き心地にドキドキする。
そうしてわたしと蘭子は、友達ではなくなった。
もっとも、振り返ってみればわたしは初めて出会った頃から彼女に対して恋愛感情を抱いていたのだから、わたしたちが純粋な友達であった瞬間なんてひと時もなかったのかもしれない。
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