イって挟んで飲ませたい (Page 2)

「あ、ありました!」

ようやく見つかったらしいファイルを香は手に取り、ペラペラと捲る。

「ここの数字、鉛筆で足してありました」

香が数字の箇所を見せようとした時、思いのほか距離が近いことに気付いたのだろう。

光太郎の顔を見て、一瞬戸惑う表情になる。

光太郎の方は気付いても知らぬ振りをして香が指した数字を見た。

「表にだけ足して管理シートには入力忘れていたんだな。後で足しておいて」

「はい」

返事をするも、何故か香が移動しない。

「どうした?」

「いえ、」

歯切れの悪い返答に、光太郎は再度問いかけた。

「あ、あの、鈴中さんは太っている人ってどう思いますか」

「え?」

「実は、私好きな人がいるんですけど……太っているから、告白しない方がいいかなぁって……」

香の突然の質問に光太郎は驚き、そして落胆した。

自分とは20歳も違うから当然対象外だろうとは思っていたが、いざ現実を突き付けられるとただの目の保養ではなく、好意を持っていたのだと気付かされた。

「……作見さんは別に太って無いよ」

「そうですか?」

「うん。あんまり細いのも抱き心地が、」

抱き心地。

その単語で香の目が大きくなった。

「あー…いや、あの、」

他の人に聞かれるとまずい内容だった、と光太郎は慌てて言葉を探すも何も出てこなかった。

「……それってやっぱり私が太っているということになりませんか」

少し怒ったような口調の内容。

だが、香にとって重要な事は抱き心地云々よりも外見のことだったように聞こえ、光太郎は安堵の息を零す。

「そんなことないよ。俺の言葉が足らなかった。気分を害したよね。申し訳なかった」

実際、光太郎にとって香の体が魅力的なのでつい出てしまった言葉だ。

しかし、それを口にすることは憚られるし、謝ることしか出来ない。

「……鈴中さんは、私みたいな体型、嫌じゃないですか?」

先程の言葉が本位かどうかを確かめるにしては、いささか悪手だと思うが、光太郎は魅力的だと伝える。

「はは、俺がもし作見さんみたいな子に告白されたら嬉しくて大声で叫ぶかな」

リップサービスというには酷い言葉だったが、とにかく話を終わらせたかった。

このままだと、光太郎が香を性的な目で見ていたことがバレそうだったからだ。

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