枯れ専美女は上司を襲いたい (Page 4)

正雄は、まったく信じられない心持ちだった。

部下の樋口彩のことを女性として見たことはなかった。
ただそれは彼女に魅力がないという意味ではない。

彼女に限らず、恋愛や性愛の対象として誰かを見ることは自分にはもう起こらないと思っていたのだった。

生涯このひとりと決めた最愛の妻が亡くなって3年、正雄は女性や恋愛だけでなく、あらゆることに対する興味を失っていた。

妻との間に子はなく、それを望んだ時期もあったが結局は2人で一緒に老いていければそれだけでいいと思える相手だった。

子がなかったためか、守べきものもなくたったひとりになってしまった正雄は、気力を奮い立たせる必要もなく淡々と仕事をするだけの自分の生活を殆ど「余生」のようなものだと思っていた。

そんな正雄がこの突然訪れた機会に喜びよりむしろ大きな戸惑いを覚えていたとしてもそれは仕方のないことだろう。

彩は若いが優秀な部下だ。普段仕事では助けられることも多い。
男性からもよく声をかけられているように感じていたが、まさか自分をそういうふうに見ていてくれたとは思いもよらなかった。

全く意識していなかったとはいえ、いざはっきりと誘われればそういう目で見ざるを得ない。
そしてそういう目で見ると、これまで注視したことがなかった彩の豊かなバストや、タイトスカートをぴちっと張らせている大きめの尻が女体の記号として正雄の脳内に一気に流れ込んできた。

自分でもはしたないことだと思うが、若い女の身体にこの後自分が触れるのかと思うと、先に立って階段を登る彩の尻の動きが急に卑猥に見えてしまう。

どきんどきんと心臓が脈打って、正雄は自分が本当に久しぶりの性的興奮に襲われていることにはっきり気がついた。

2階にある彩の部屋に入るその頃には、正雄の頭の中は彩の肉体のことで既に一杯になってしまっていたのだった。

「どうぞ」

彩はドアを開けて自分がまず中に入り、ドアに内側から手をかけて正雄を招き入れた。

「ありがとう」

正雄の声は緊張でこわばっている。
年長者、それも随分年上の人間として恥ずかしいと思ったが、正直に言うと不安で声は掠れている。

中に入るとそこはこぢんまりとしたワンルームで、入ってすぐ見える場所にベッドが置いてあった。
妻以外の女性の部屋に入るのがどれくらいぶりなのか、もう記憶の底にも残っていない。

ふんわり香るルームフレグランスの植物の香りが正雄の鼻腔をくすぐり、そのいかにも若い女性の部屋といった香りが正雄のかすかな情欲を煽る。

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