残り一枚なにを撮る? (Page 3)
冬のずっしりとした風に肩を寄せ合い、二人は畑に挟まれた道をてくてくと歩いていく。程なく直哉の実家に到着した。駐車場に両親の車が止まっている。二人とも早々に仕事を切り上げて息子の帰りを待っているのだろう。
「じゃあ、ここで」
「うん。ありがとう、きよちゃん」
「ううん、帰りも送って行ってあげようか?」
「流石に悪いよ」
「気にしなくてもいいのに。まあ、いっか。じゃあね」
「うん、じゃあね」
再会した時と同じようにひらひらと手を振ってから清音は背を向けた。
荷物を持ち直し、玄関に入ろうとしたところで、直哉は自分が持っているお土産が一つ多いことに思い至る。
「あっ」
慌てて離れていく背中を直哉は追いかける。
「ごめん、きよちゃん」
「えっ、えっ、なに」
「これ、お土産。忘れるとこだった」
「えぇー」
お土産を受け取った清音は苦笑する。直哉も同じように苦笑した。
二人でくすくすと笑い合う。
「ねぇ、なおちゃん」
「なに?」
「今から時間ある?」
「僕はいいよ。あっ、でも荷物は置いてきたい」
「玄関で待っててもいい?」
「いいよ」
小首を傾げる清音に即答し、二人は再び芦原家に舞い戻る。
荷物を玄関に放り出し、台所にいた母親に清音と出かけるとだけ告げて直哉はすぐに外へ出た。
「どうしたぁ」
「清音ちゃんと遊びに行くんだって。大学に行ったって、なぁんにも変わらないんだから」
両親がどこか安心したように笑い合っているのを直哉は背中で聞き流す。
それよりも清音を待たせている。
「お待たせ」
「行こう」
先程と同じ道を逆さまに歩き、二人は清音の家に着いた。
これまた先程とは反対に直哉が玄関で清音を待つ。
子どもの頃には随分高く感じた上がり框が、今となっては大した段差にも見えない。靴箱の上に飾られた和人形の入ったガラスのケースはいつも綺麗なままだ。実は彼女の父親が仕事へ出る前に綺麗にしているのだと直哉が知ったのは、中学生のころだったろうか。
あの頃に比べて背も伸びたが、やっていることは変わらない気がした。
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Muchas gracias. ?Como puedo iniciar sesion?
qxhciyjhus さん 2024年10月22日