残り一枚なにを撮る? (Page 8)

「なおちゃん、大丈夫だよ。最初は、初めては中に欲しいよぉ」

「きよちゃん、中に、奥に出すよ」

 直哉は清音の腰を掴み、一番奥まで男根を挿入し、ぴったりと子宮の入り口に密着させて射精した。ぎゅうっと彼女の中が収縮し、一滴たりとも精液を零すまいという蠢く。

「きよちゃん、好きだ」

 息も絶え絶えになり、直哉は彼女を抱きしめて名前を呼んだ。返事はなかったが、代わりに口づけの雨が降らされる。

 

 絶頂の余韻が抜け、二人は身なりを整えてかつての学び舎を抜け出す。

 学校に来た時とは違う道を使い、二人は再び直哉の家まで帰ってきた。

「その、えっと……」

 なんと言ってよいのか分からず直哉は口ごもってしまう。それは清音も同じらしく、二人は初心に顔を赤くし、もじもじと相手の顔を見ているばかりだ。

 そうこうしているうちに、直哉の背後で玄関が開いた。

「あら、あんた帰ってきたの? って、あんたねぇ、そんなに真っ黒になって、きよちゃんまで。いい加減、子どもじゃないんだから。まったく、さっさとお風呂入っちゃいなさい。きよちゃんもうちで入ってく?」

 突然姿を現した直哉の母が二人に口を挟ませない勢いで喋りまくる。

 直哉も、清音も、口をあんぐりと開けてあっけに取られてしまう。

 それから二人は顔を見合わせて、くすくすと笑ってしまった。この人たちにとって、自分達はいつまでたっても子供のままなんだと。

「おばさん、今日は帰ります。じゃあね、なおちゃん」

「またね」

 ひらひらと手を振って清音は背中を向けた。

 その背中を見送る直哉は何気なくポケットに手を突っ込む。

「あっ」

 思わず声を上げる。

 使い捨てカメラが入れっぱなしになっていた。追いかければ返せる。

 だが、直哉はそうしなかった。

 にこりと笑い、カメラを構える。ファインダーの向こう側には、小さくなっていく清音の後ろ姿があった。

 シャッターを押すと、パチリと軽い音がした。これで本当に撮れているのだろうか。少しばかり不安になったが、彼はまたポケットにカメラを戻した。

 もし撮影に失敗していても、また撮ればいい。

 使い捨てカメラのフィルムでは、とても足りないぐらいの写真を撮るだろうから。

 このカメラの最後の一枚は、友達だった彼女の最後の一枚だ。

 これからは二人の関係もちょっとだけ変わるだろうから、その記念に。

(了)

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