残り一枚なにを撮る? (Page 6)

「もう、なおちゃんは帰ってこないかと思った」

 ぽつりと清音が零した。

 空っぽの教室に落っこちたその音があまりに切なくて、直哉は心音がひとつ高くなった気がする。心臓の音に蹴飛ばされるように彼の口からは言葉が飛び出していた。

「そんなことない」

「うん、分かってる。だって、今年は帰ってきてくれたから」

「ごめん。去年は、その、お金なくて」

「そうなの?」

 背中側から驚いて声が飛んでくる。

「うん。今年は夏にバイトを増やして、それで帰ってきた」

「……なんだぁ」

 直哉の背中に彼女の顔が押し当てられる。安堵したような深い深い溜息。

「きよちゃんは、忘れちゃったかもしれないけど。僕はずっと憶えてるよ、初めてキスした時の約束」

 一世一代の告白のつもりだった。

 だが、返ってきたの来たのは大きな笑い声である。落胆し、直哉はさすがに離れようとした。だが、それを清音が許してくれない。彼の体の前に手を回し、強く抱き締めてくる。耳を澄ますと彼女の笑い声の合間には、鼻をすする音が聞こえていた。

「……ごめん。変なこと言って」

「ぢがうよぉ、嬉しくて」

 鼻声で彼女は笑いながら言う。

 しばらくすんすんと鼻を鳴らしていたが、落ち着いたらしく清音は彼を解放した。

「ねぇ、キスしよっか」

「えっ、ここで?」

「だめ?」

「ダメじゃないけど」

 直哉の前に回り込み、清音は目を閉じる。微かに顎を上げ、じっと彼を待っている。

 軽く咳払いをして、直哉は彼女と唇を重ねた。わずかな触れ合いだったというのに、直哉は一度か二度は体温が上がった気がする。

 間近でうっすらと清音が目を開き、微笑む。その瞳に魅入られて、直哉は彼女に手を伸ばしていた。思ったよりもずっと華奢な肩を掴み、もう一度口付ける。唇を割って舌を差し込む。緩やかに開かれた口唇の奥で清音は彼を受けいれた。互いの舌を絡ませ合い、吐息を交換する。

「……だいたん」

 興奮で上気した顔だけでなく、清音は声音も蕩けそうだ。それを聞いている直哉も熱に浮かされたような心地になる。

 彼は清音の耳元から首筋まで手指を這わせた。滑らかな肌の感触に増々体温が上がり、頭の中で理性が解けていくのが分かる。

「はぁっ、ねぇ、なおちゃん」

 悩ましげな声で彼女に呼ばれ、溶け崩れかけていた直哉の理性がついに形を失う。腰を抱き寄せ、首を甘噛みした。柔らかな肉の感触に彼の股間は硬さを増す。清音の上着に手を潜り込ませ、乳房を軽く揉む。下着のせいか少し硬く感じられる。

 もっと。

 直哉はそう思い、清音の胸元に顔を近づけて服の下へと手を侵入させた。

「んっ、うぅん、はぁっ」

 服の下でもぞもぞしながら苦労してブラジャーを外し、彼は清音の前をはだける。薄暗い中で彼女の肌は直哉を誘蛾灯のように強烈に惹き付けた。

 固くなった乳首を口に含む。赤子のように熱心に吸う直哉の頭を掻き抱き、清音が喉を反らす。そして、自由になっている直哉の手は彼女の尻をまさぐり、股間を摺り上げた。

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