放課後特別授業

・作

新米教師の松田は幼いころからの夢をかなえて教師になったが、ある失態から生徒たちに変態・童貞とバカにされてしまう。どうすれば挽回できるか考えていると、施錠当番がまわってきた。教室には一番最初に自分をばかにして噂を広めた羽田がいて…。放課後の教室で体に教え込む特別授業!

「今日から2年1組の担任になる松田です。1年間よろしくお願いします。」

生徒からは何の反応も帰ってこない。

ぼくが学生の時もこんな感じだった。

大丈夫、これから少しずつ距離を縮めていけばいい。

自分に言い聞かせてホームルームをすすめる。

キーンコーンカーンコーン。

「では、以上です。今日からがんばりましょう。」

「きりーつ。れーい。」

その途端生徒が一斉にしゃべりだした。

さっきまでは隠れてケータイをいじっていたり机に突っ伏して寝ていたり生気のない目でぼーっと前を向いて座っていたのが、一気に色を取り戻し生き生きと10代らしく輝いている。

その変化にやや落胆して教室を出ようとすると

「わあっ!」

教壇を踏み外してドアの前で尻もちをついてしまった。

「いててて。」

生徒は誰も気づかない。

痛くてそのままの場所で座り込んでいると女子グループがやってきた。

「邪魔。どいて。」

「健康診断うちら1組からなのに。」

「担任が教室のドア塞いだせいで遅れるとかマジ迷惑。」

見下ろしながら高圧的な口調で責められる。

「ごっごめんね。」

「いてっ。ううっ。」

痛む尻を抑えながらなんとか移動する。

ぞろぞろと前を通り過ぎようとしてほっとすると一人が立ち止まった。

「ねえねえ。ちょっと待って。」

「さやか、どうしたの。」

「ほら、あれ。」

ぼくを指さす。

「ん?うそ。やだー。」

「最悪マジありえない。」

いったいぼくの何をそんなに見ているのだろう。

「ど、どうしたのかな?何か変?」

「トイレに行ったらちゃんとチャックは上げなきゃ。常識でしょ?」

股間を見下ろすとズボンのチャックが開いたままになっていた。

その上今日は前開きのトランクスでこちらのボタンも開いていた。

「ああ!」

みっともない気持ちになりながら急いでチャックを上げる。

「セクハラ教師。」

「キモ。こんなのが担任とか無理。」

ぼくの悪口を大声で言いながら教室を出ていった。

「ごめん。本当にごめんね!」

後ろから必死に謝ったけど聞こえた素振りはない。

はあ。初日からやってしまった。

あの子たちがぼくの失態をあまり広めなければいいけれど。

職員室に戻ろうと立ち上がった。

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