泣き虫な幼馴染みは処女なのにとっても積極的だった件 (Page 7)

「みつまさ~。いる~? ちょっと、話があるんだけど~」

 玄関から俺を呼んでいたのは勝子だった。
 驚いて俺たちは顔を見合わす。
 
「どうしよう……。……でも、良かった靴を置いてこなくて……」

 混乱したように、安堵のため息を吐く信子。 
 まったく別の結果だったが、気遣いは正解だったようだ。
 しかし、だからといって状況が改善したわけでない。
 このまま信子がいる状態で、勝子が入ってくるのはいかんせん気まずい。
 困ったまま考えていると、勝子は間断なく玄関のチャイムを鳴らしてくる。
 あまり猶予はなさそうだった。
 オレは仕方なく信子に申し出る。

「とりあえずどっかに隠れておいて、隙を見てでるか?」
「そうね、じゃあ、クローゼットの中にいるから、上手いこと誘導して」
「わかった。じゃあ、ちょっと出てくるわ」

 信子がクローゼットに隠れ、違和感がないことを確認すると、まずトイレに向かい水を流す。
 そして、慌てて階段を駆け下りて玄関まで降りた。
 
「はいはい。ちょっと待ってくれよ、今開けるからな」

 オレがドアを開けると、やっぱり泣きべそをかいている勝子がいた。

「うわ~ん、やっと開いたよ~。居留守使われて、私、嫌われちゃったかとおもっだよ~」
「ごめんごめん。トイレにいたんだよ」

 泣き声混じりの勝子に、困ったように頭をかくオレ。
 まだ微かに残る水が流れる音に、勝子は少し納得したようだった。
 
「ぞっか~、ごめんねぇ、無理矢理呼び出したみたいになっで~」
「いやいや、いいって。で、どうしたんだ。オレに何か用か? 秀子もいないみたいだけど」
「ん~、秀子がいないとダメなの?」

 勝子の眉が軽く上がる。
 しまった地雷を踏んだか、と思ったオレは慌ててフォローを入れる。

「いや、そういう訳じゃない。いつも一緒だから、気になっただけだよ」
「今日は私だけだよ~。ちょっと、光正に話があってさ。中に入って良い?」
「んっ、お、おう。まあいいよ。上がれよ」
「おじゃまします~」

 元気良く入ってくる勝子。
 信子のように靴は持ち上がらず、玄関に綺麗に並べていた。

「何か飲むか?」
「いやいらないよ。ありがと、お気遣い感謝します」

 やけに丁寧な口調でそう言うと、勝子はオレの背中を押す。

「おいおい、危ないって」
「さあ、光正の部屋へれっつご~」

 誰の家だか分からないくらいの勢いで、オレは自分の部屋に押し込まれた。
 もちろん、勝子もそのまま入ってくる。
 
「じゃあ、ベッドに座るよ~。あっ、光正もこっちに来てよ」
「はっ? いや、オレは椅子でいいよ」

 勝子は、信子と違いクッションには座らずに、ベッドに腰掛けた。
 そしてオレを招き寄せようとする。
 流石にそれは拒否したかったので、学習机の方に向かおうとすると、やっぱり泣かれた。

「ぞんなにはなれて……、わたじのぢがぐはいやなんだぁ」
「わーった。わかったから、泣くなって」

 泣くこと勝子には勝てぬ。
 そんなことわざができそうなほど、今日の勝子は傍若無人だった。
 オレは仕方なしに勝子と横並びに座った。

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