懐かしの赤いパンティ (Page 2)

第2章
25年来の「赤パン」への想い

イベント・ディレクターの邦夫は、峰子よりも5歳年下なので43歳。バツイチで現在は独身だった。
世代的にバブルの恩恵は受けておらず、代わりにリーマンショックのあおりを十分に味わっていたので、経費を湯水の如く使っていた世代ではなかった。広告・イベント業界にいても、派手さは微塵もなく“適当に”コツコツとやってきたタイプだ。

その邦夫が新卒で入ったイベント会社が、よく組んでいたのがSP(セールスプロモーション)会社の某A社だった。そこで主任としてバリバリと辣腕を振るっていたのが、まだ結婚歴がナシの頃の峰子だったのである。

その頃の峰子は、“バブルの残り香”を漂わせた薄紫や赤いスカート・スーツを身にまとっていた。もちろん、スカートはヒザより“ちょい短め”の丈である。

「そういえば打ち合わせに行くと、いつも『赤いパンチラ』を見せられていたっけな」
と、邦夫は丁稚小僧の時代を思い出していた。
「それが今日(いま)でも、赤パンとはなぁ。恐れ入ったぜ」。

邦夫にとって峰子は、「バブルの匂いをさせたお姉さまOL」で、憧憬の対象だったのである。

その邦夫の現在は、自分の会社を潰したあとに拾ってもらった、零細広告会社の「第4制作室」に収まっていた。肩書きは室長代理、担当は他の部署が取りこぼした案件の全てだ。

そうして邦夫は、愛車をカマロZ28(1990年製)から荷物を積むためにメルセデス・ベンツ300TDT(1985年製)に乗り換え、マンションを慰謝料かわりに妻に渡して離婚。文字通りに、ゼロからの再スタートを切ったのである。
帰社してデスクについた邦夫は、頬杖をついて峰子を思い出していたのだ。

峰子の方も2度の結婚に失敗したり、独立して立ち上げた会社を畳んだりと、邦夫に負けない程の波乱万丈ぶりのようだったらしい。

「これも“縁”かもね(笑)」
と、邦夫。
「2人合わせて100歳近くの“縁”ですかぁ。しかも、私の方が年上!(笑笑)」
と、笑う峰子は満更ではない様子だった。

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