懐かしの赤いパンティ (Page 3)

第3章
打ち上げは「2人っきり」で!

こうしてイベントは始まったのだった。
邦夫はイベント全体を統括するディレクターとして関り、峰子は関連商品の米国製シャンプー・コンディショナーをSPする会社のチーフとして名を連ねていた。

イベント自体は巨大ショッピングモールの特設会場で、グラドルグループの写真集発売を記念して撮影会や握手会をするというモノ。会場は北関東の某都市にある施設に決まった。種を明かせば、邦夫が昔から懇意にしている芸能プロの社長が「邦ちゃんさぁ、今度ウチからグラドルグループを売り出すからさぁ、何か企画出してよ」と、昭和のノリで頼まれた事がきっかけだった。

拾ってもらった会社に恩もあるし、取り敢えず企画をデッチ上げたところ通ってしまったというわけだ。

特設会場というのには訳アリで、モール内で開いて「風紀上、子供たちの教育に好ましくない」というクレームを避けるためだったのである。「水着でギリギリ」というわけだ。

その発売に乗っかって、タイアップしている水着メーカーや紫外線カットの化粧品輸入屋、傷んだ髪用のシャンプー・コンディショナーの販売元等が実演即売会を開くという催しだったのである。
それで、峰子が出張ってきたというわけなのだった。

「思いっきり晴れてくれるといいわね。髪が痛むくらいに日が差してさ」
いつの間にか、隣りに立っていた峰子が言ったのだった。最近の若いコ゚は海に行かないから、ケア用のシャンプーは苦戦している。シャンプーを売りにきている峰子も気になっているのだろう。

それはさておいて、イベントの難易度的にはハードルは高くないので、無事に催しは終了した。最終日は早めに終わるのが慣例なので、邦夫の「第4制作室」も全体の撤収が終わると早々と引き上げていったのだ。
邦夫の方も「監督も打ち上げに出ませんか?」と、イベントにタッチしていたモール内のカメラ屋(撮影会で電池やSDカードが結構売れたらしい)や本屋(今回のグラドルとは関係のない写真集も結構売れた)、あとは芸能プロの社長やモールの主任クラスも来るらしいとの事だった。

それでも邦夫は、
「クルマなので、これにて失礼します。部下も待たせてありますから」
と、宴席を辞していた。

クルマで帰るのは正しいが、予定では明日だ。「部下を待たせてある」というのは、ウソである。実はその日の昼休みに、
「結局、イベントの最中は忙しくて話しもできなかったから、2人して『打ち上げ』して行こうよ」
と、峰子に誘われていたのだ。オジサンと飲むよりも、“赤パンが脳内をチラついていたので”当然、「いいよ」と答えたのは言うまでもなかった。

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