同じ町内会の人妻と不倫をしている話

・作

橋田秀和と宮本恵理子は、同じ町内会の役員同士。家庭内での立ち位置が同じだという二人は、似たような境遇から親睦を深め、いつの間にか男女の仲になっていた。今日も二人は役員会議後に、ホテルへと向かう。どこかであるかもしれない、そんな最低な男女の話し。

町内会の役員として会議に参加する宮本恵理子の第一印象は、人見知りといったものだった。
眼鏡をかけてセミロングの黒髪、そして人と目を合わせない。
そして話かければ、必ず言葉に詰まる。
そんな様子を見れば、対人関係が苦手だと思うだろう。
しかし、同じく町内会に参加している橋田秀和は知っていた。
ベッドの上の恵理子は、ひどく乱れるということを。

「じゃあ、再来月の町内旅行の話はこんなもんですね。お疲れさまでした~」

町内会長の掛け声により、各々解散していく。
年齢の高い層の人達なんかは、少し長めの立ち話なんかを始めたようだ。
そんな中、橋田は恵理子から声をかけられた。

「あ、あの、橋田さん……」
「ああ、宮本さん。お疲れ様です」

もじもじとしている様子の恵理子に、橋田はこちらへ、と自分の車へ誘導した。
橋田も恵理子も、一応家庭を持つ者同士だ。
一緒にいるところをあまり見られたくないというのは、同じだった。

「今夜、一緒にご飯でもいかがですか?」
「かまいませんよ。どうせ帰っても、僕の分の食事なんて用意してありませんから」

橋田と恵理子の距離が近づいたのには、理由があった。
それは、二人とも家庭内が冷え切っているということだ。
離婚も検討したが、双方の家庭とも子どももいるということで、世間体のためにこういった行事には顔を出すし、役員としても参加している。
もうとっくに他の人達には夫婦間の関係がよくないことなど見抜かれているのは、承知の上だった。
橋田と恵理子は、偶然役員の飲み会の時に席が隣同士になり、ひっそりとそんな話をしているうちに仲良くなった。
似たような境遇を持つ者同士が親しくなるのは、どんな場合でも同じなのだ。

恵理子を乗せた橋田の車は、隣町まで走る。
適当な店に入り、適当な食事をして、適当な会話をして、自らの家に帰る前に適当なホテルに入った。

「今夜も遅くなって大丈夫ですから……」
「よかった。僕もです」

今だけはただの男女である橋田と恵理子は、ベッドの上でそっと唇を重ね、数度ほど繰り返すとやがてその身を抱きしめ合った。
同じ境遇だと知り、寂しさを埋めるためなのか、二人はいつの間にか男女の関係を持つようになっていた。
良くないことだとはわかっている。互いに子どももいるのだ。
なのに、どうしても理解してくれる相手を手放すこともできず、こうして度々二人で逢瀬を重ねている。
リスクも高い不倫であったとしても、家庭に居場所のない二人はお互いが唯一の心のオアシスだった。

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