巣立ちの季節 (Page 2)
甘やかし続けた妹。
陽菜は「子供扱い」などと言うが、蒼からすればいつまでたっても「可愛い妹」であることは変わりない。
子供。
本当はその言葉に苛立ちを感じている。
彼氏が出来た時点で、この可愛い妹は「子供」などではなくなったのだから。
陽菜が付き合うと知った時、蒼は腸が煮えくりかえる思いだったが、表情には何一つださず、ただ微笑んだ。
「へぇ、良かったな」
何も良くないのに、そう微笑みかければ陽菜は嬉しそうに笑った。
陽菜の初めては全て自分のものだと思っていたのに、とんだ誤算だとどうしたら良いのか悩んでいる内に、陽菜は別れた。
喜んだのもつかの間、また次の男が現れ、蒼の心中が穏やかになる日などなかった。
けれど、もうこれでおしまいだと笑う。
蒼が笑った意味を勘違いし、陽菜は怒った。
「お兄ちゃんはモテるから、わかんないんだよ!」
「そんなことないよ」
「そんなこと、あるよ。だって、お兄ちゃんいつも綺麗な人と付き合ってるじゃない」
付き合ってなどいない。蒼にとってあれは全員単なる性欲処理用の女だ。
もちろん、陽菜には言えないと蒼は「そうだったかな」と微笑む。
「私、知ってるんだから!お兄ちゃんがホテル行くの見た事あるんだから」
「ホテル?」
「私も彼氏と行った時、見たんだから!」
「へぇ、そう」
「ホテル行くくらいだから、彼女でしょ?」
蒼は否定も肯定もしなかった。
そんなことより、重要なことは「陽菜がホテルへ行った」ことだ。
「そこでえっちが良くないって…言われたんだ」
「……うん」
「今までの男全員から?」
「うん」
「それは、問題だな」
問題、その言葉で陽菜は目を潤ませた。
「お兄ちゃん、どうしよう…このまま私えっちする度に別れることになるかも……」
「それは大変だな」
蒼が大袈裟に頷いて見せれば、陽菜はどうしようと蒼の服を掴んだ。
「じゃぁ、俺が教えてやろうか」
「何を?」
「セックス」
蒼は笑ってそのまま陽菜の手を引き寄せ、腕の中に閉じ込める。
「え?」
「だって、このままだと陽菜は不安なんだろ?えっちに自信持てないんだろ?だったら、俺が教えてやるよ。教えるの上手いの知ってるだろ?」
優しい声でたたみかけ、蒼は陽菜を見つめる。
いつだって分からない事は全部自分が教えてきただろう、そう繰り返せば陽菜は小さく頷いた。
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