退魔師マコト (Page 2)
豊満な胸の美女……佐野マコトの前にいるソレは、ヒトの形をしているがヒトではない。
緑色の肌、手指には鋭い鉤爪、額には短いツノ、口には牙、そして赤い目。
ヒトの形をしているが、ヒトではない存在……魔物と呼ばれる存在である。
普通の人間だったら、魔物の姿を見ただけで恐れるだろう。
魔物は人間に本能的な恐怖を与える気配を放っている。
だがマコトは、魔物を前にしても恐怖を抱かない。
平然と、堂々としていた。
夜が生む闇、そのあちこちから次々と魔物が姿を見せ、包囲されてもマコトは恐れを抱かない。
マコトを包囲した魔物たちは、グルグルとうなる。
獲物をキャリアウーマンから彼女に変えたらしい。
マコトは自分を包囲する魔物たちを一望して「ふんっ」と小さく鼻を鳴らすと、
「数がいればいいってものじゃないわよ」
挑発的な口調で言う。
魔物の数体が剣や斧を振り上げて、奇声を発して彼女に飛びかかった。
「言ったでしょう? 数がいればいいってものじゃない、って」
そう言うマコトの両腕が、バチバチと放電する青白い光に包まれる。
彼女が両腕を振ると、電光が四方八方に向かって飛んだ。
飛びかかっていた魔物たちに直撃する電光。
魔物たちは悲鳴を上げ、地面に落ちた。
マコトがまた両腕を振ると、再び青白い電光が飛んで地面に落ちた魔物たちに当たる。
電光の直撃を二度も受けた魔物たちは、悲鳴を上げるヒマもなく黒焦げと化す。
残った魔物たちは怯(ひる)む。
マコトのことを獲物……ただの人間だと思っていた。だが違った。
魔物と戦い、そして倒す力を持っている……そのことを知った。
残った魔物たちは警戒する。獲物ではないのなら用はないと、逃げだす魔物たちもいる。
「逃がすかっ!」
マコトはバチバチと放電している右腕を振った。
青白い電光が、背を向けて逃げだした魔物に向かって飛ぶ。
魔物は人間の敵だ。人間を襲い、そして食らう。
そんな魔物を逃がす気は、マコトにはない。見つけた魔物はすべて倒す。
マコトの右腕から飛んだ電光は、逃げる魔物たちの背中に当たった。
「もう1発!」
さらに飛ぶ電光。
二度も電撃を食らい、魔物たちは黒焦げと化した。
魔物に仲間意識というものがあるのどうか、マコトは知らない。
警戒していた魔物たちがマコトに襲いかかってきたのは、仲間の仇討ちのためか?
それとも、逃げることが不可能そうだから、せめて一太刀浴びせようとでも思ったのか?
どちらでもいい、とマコトは思った。魔物は倒す。それだけである。
武器を振り上げ、一斉にマコトに襲いかかる魔物たち。
マコトの両腕が強く放電する。
放電する両腕を振るマコト。一斉に襲いかかってきていた魔物たちに向かい、青白い電光が飛んだ。
魔物たちの武器がマコトに届くことはなかった。武器が届く前に電光の直撃を受け、吹き飛ぶ。
地面に落ち、うめく魔物たちに向かって、マコトは電撃を放った。
彼女に襲いかかった魔物たちも、二度の電撃を受けて黒焦げと化す。
この場に姿を現した魔物は、すべてマコトの電撃によって黒焦げと化した。動いている魔物はいない。
マコトは周囲の気配を探る。あちこちに夜が生む闇がある区画。他にも魔物がいるかもしれない。
だが、もう魔物の気配を感じることはなかった。
どうやら、この辺りにはもう魔物はいないようだ。
マコトがまだ魔物がいるかどうかを確認している間に、電撃を食らって黒焦げと化した魔物たちの亡骸に変化が生じる。
亡骸は、少しずつ灰と化していった。
もう魔物がいないことを確認したマコトがその場から離れたときには、そこには魔物の形をした灰の塊だけが残っていた。
だが、すぐに形は崩れ、ただの灰の山となる。
風が一陣吹くと灰の山は散り、その場には何も残らなくなる。
ここに魔物と呼ばれる存在がいたという証拠は消えた。ここに人ならず異形の怪物がいたと言っても、誰も信じないことであろう。
◇◇◇
trsikhiyjt
Muchas gracias. ?Como puedo iniciar sesion?
wihrnhdner さん 2024年11月20日