退魔師マコト (Page 8)

 魔物の触手の1本が、気絶寸前のマコトの首に伸びる。
 それを彼女の首に巻き付け、折ろうとしている魔物。
 退魔師は魔物の敵。殺しておくに越したことはない。
 触手がマコトの首に巻き付こうとした瞬間だった……彼女の右手が動いた。
 首に巻き付こうとした触手を掴むマコトの右手。

「なにっ!?」

 抵抗する力はもう彼女にはないだろうと思っていた魔物。なのに触手を掴まれ、魔物は驚く。

「こおぉっ!」

 マコトはどうにか気合を入れ、掴んだ触手に電気を流す。

「ぐああっ!」

 触手を通して高圧の電気が流れてきて、魔物は悲鳴を上げる。電気を流された触手は黒焦げと化す。
 バチバチと放電するマコトの両腕。
 力が入らない脚に無理やり力を入れて立ち上がったマコトは、触手越しに電撃を受けて怯(ひる)んでいる魔物に接近する。
 そして放電している両腕を突き出した。両手のひらが魔物の体に触れる。

「滅べっ!」

 叫びとともに電撃を放つマコト。
 ゼロ距離からの電撃……魔物は避けることができなかった。電撃を浴びてしまう。

「ぐああああっ!」

 絶叫を響かせる魔物の体が黒焦げと化す。
 倒れる巨体。ピクリとも動かない。
 力を振りしぼって電撃を放ったマコトは、その場に座り込んでしまう。
 そんな彼女の目の前で、魔物の巨体は灰と化していった。
 どうにか触手を持つ魔物を倒したのを確認したマコトは、たまらず倒れ込む。今は少しでも休みたかった……。

◇◇◇

 夜が生む闇の中には、人ならざる存在が潜んでいる。
 魔物……ソレはそう呼ばれていた。
 人を襲い、人を食らう存在だ。
 魔物が潜んでいる闇に、1人の女性が近づく。魔物はその女性に飛びかかろうとしたが、それよりも速く電撃が飛んできた。
 電撃は魔物を吹き飛ばす。
 魔物は女性に飛びかかることができなかった。

「あんたたちの好きにはさせないわよ」

 魔物が潜む闇の中に姿を見せるのは、マコトであった。

 マコトは今日も人知れず魔物と戦う。
 人を守るために、魔物と戦う。
 それがマコトの使命であった。

(了)

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