美しい夫婦の歪んだ欲求 (Page 2)

「驚かせちゃったよね、ごめんね。あ、そこ座って」

 おそらく旦那であろう、先程窓を叩いた男性は、全裸の奥さんの横を通り過ぎて俺を高そうな椅子へ案内した。

 失礼します、と言ってそこへ腰を下ろす。こんなにフカフカな椅子、初めて座った。

「お茶とジュース、どっちが好き?」

「いっ、いや、お構いなく……!」

 細かな装飾が施されたグラスに注いだ飲み物を差し出された。

 どうやら、怒ってはいない様子だ。けれど信用してはいけない、この飲み物にももしかしたら何か毒が入っているのかもしれない。

 口をつけることなくグラスをテーブルへ置いた。

「んあああっ!!」

 奥さんの艶かしい声と、ゴトンという音に驚いて振り返ると、どうやらバイブが抜け落ちてしまった様子だった。

 慌てて目を逸らすと、旦那さんは奥さんの方へ向かった。

「きみ、何回か外から見てたよね。知ってるよ」

「えっ……、す、すみません……」

「謝らなくていいよ。こっちこそごめんね、変なもの見せつけちゃって」

「んああっ、あっあ、ああんっ!!」

 何をしているのか、ぐちゅぐちゃという水音と奥さんの激しく喘ぐ声が重なり合う。

「よかったらこっちへおいでよ。手伝ってくれない?」

 旦那さんの声に誘われるように振り向く。

 初めて、奥さんの顔を見た。

 肩くらいまでで切り揃えられた黒髪。くりくりの丸い目。小さくてぽってりとした唇。丸い輪郭。童顔で、可憐で、いやらしさとは対極にあるような可愛らしさだった。

「歩美、挨拶して」

「あっ……、上野歩美です、専業主婦です、……こんな格好ですみません」

 彼女は正座をして華奢な身体を縮こめ、両腕で肌を隠すようにしていた。

「歩美は、窓の外からきみの視線を感じるたびすごく濡れてね。きみの存在にひどく興奮していたんだよ」

 旦那さんは、彼女に立ち上がるように言った。彼女は両手で胸と下半身を隠しながら立ち上がる。その足元は、水溜りになっていた。

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