45歳バツイチ男のモテキはラッキースケベから始まる。

・作

新田彰はバツイチである。会社では目立たないように仕事をこなし、目立たないように人付き合いを繰り返している。そんな生活を続けていた新田彰に幸運(?)が訪れる。行く先々でラッキースケベが起きるようになり、ついには会社の後輩との身体の関係にまで発展する…。

【新田 彰(にったあきら)45歳/広告代理店勤務/離婚経験あり】

 話は1週間前の飲み会の席での女性社員との会話にまで遡る。
 
「その占いアプリなら知っていますよ。」

 広告代理店という職業柄、世の中のブームは欠かさずチェックしている。このアプリもその一つだ。

 アカウントに自分のプロフィールと、普段の生活リズム、家族や友人との関係を入力し、他人のアカウントと共有することで、運勢を総合的に判断する占いアプリ。

 このアプリを使った新たな出会いの場を提供するイベントを、クライアントへ提案しているらしく、色々な年齢層のプロフィールが必要なので、私に相談してきたのだ。

「出会いの場ですか…。」

 私は今、独りで結婚当初に建てた一軒家に暮らしている。一緒に住む直前に元妻は、浮気相手の男と逃げて行った。元妻は私のことが好きではなかったのだろう。

 だから私は仕事に没頭し、人との関わりを最小限にしてきた。元妻に逃げられるような人間が昇進など出来るはずもなく、年齢に合わない雑用係を担当している。

『プロフィールの登録ができました!』

 アカウントの作成が終わり、最初の占いの結果が出る。その占いをみて私自身がアカウントを持っている人に対して行動すると、結果が少しずつ変わっていくという仕組みだ。

(最初の占いの結果は?)

『たくさんのラッキースケベに遭遇するでしょう』

「なんじゃ、こりゃ??」

 そして、現在…

 私は今、満員電車の中で若い女性に囲まれている、ダイヤの変更が合ったらしく女子大生の通学ラッシュと重なってしまったようだ。

 キャピキャピした話し声と、若い子特有の香りに包み込まれているこの車両は、女性専用車両と間違えて乗り込んでしまったのかと思ってしまうくらいだ。

「きゃっ…。」

「ごめんなさい!」

 電車が揺れるたびに代わる代わる細い腕や柔い胸の感触が私の体に押し付けられてくる。幸いにも、痴漢と叫ばれることは無かったが…。

(これがラッキースケベなのか?明日から一本電車を早めよう。)

 私は、早く降りる駅に着いてくれと心底願いながら、できるだけ小さくなって過ごした―――。

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