45歳バツイチ男のモテキはラッキースケベから始まる。 (Page 8)
「―――早瀬さん!…起きれますか?歩いてください。」
「んん…?ここは?」
タクシーの中で眠っていた早瀬さんを起こし、私は彼女を自宅へと案内した。
「私の家です。私以外だれも住んでいないですから、気にせず上がっていってください。」
「ああ…新田さんの家ですか。おじゃましまーす…スー。」
挨拶をしながらも、早瀬さんは目を閉じていってしまう。
(2階の客間を準備しようと思っていたが…私のベッドに寝かした方が早いかもしれないな。)
泥酔したままの彼女を起こして待たせるよりは、そのまま朝まで寝てくれていた方が、間違いも起きないだろうと私は思い、彼女を寝室へと引きずっていった。
彼女の荷物を寝室の入り口付近に置いて、ベッドの脇へ彼女を座らせる。
「私のベッドで申し訳ないが、今日はここを使ってくれ。」
そう言って、彼女から離れようと支えていた腕を外すと、逆に彼女の腕が私の首に絡んできた。私は体勢を崩し、そのまま彼女を押し倒す形でベッドの上に倒れ込んでしまった。
「えへへ。新田さん…私が酔って寝てると思ってましたー?残念!起きてましたよー。」
「あ…いや…気づいてなかったよ。すまない…すぐに退くよ。」
私は身体を起こして、ベッドから起きようとするが、彼女に抱きしめられて再びその胸の中に顔を埋めることになる。
「ダメです…気づいていなかった罰なんで…このまま、ぎゅーってさせてもらいます。」
どういう罰なんだ?まだ彼女の酔いは醒めていないのだろうと思い、私はそのままの体勢でいることにした。
(人に抱きしめられるのは何時ぶりだろう。)
抱きしめられたその胸の奥からドキドキと鼓動が聞こえてくる。それは早瀬さんの心臓の音なのだろうが、私には自分の心臓の音のようにも聞こえた。
「ありがとうございます。」
不意に彼女から感謝の言葉が掛けられる。
「今日、新田さんと会えて良かったです。家を出てから…ほんの数日だったんですけど。頼れる友達もいなくて、ホテルとかファミレスとか色々転々として…不安でした。」
(私がもっと上手く立ち回れていれば、そんな思いはしなかったかもしれない。)
「すまない…私はなんの力にもなれなかったな。」
「そんな事ないです!私は新田さんに救われました!不安はもっと前からなんです…その不安を消そうと思って、私は仕事に没頭して。不安になったら…また仕事して…。」
どこかで聞いたような話だ…嫁に逃げられて1人になって、仕事に没頭して…。
「…なにをしても相手の人に否定されて。そんなときに新田さんが、辞めるほど思い込まなくていいって。だから、考えられたんです…辞めて後悔するのは何だろうって。」
後悔していた…この家で1人になるまで、嫁の気持ちに気づけていなかったことに。
「私は新田さんのおかげで不安が吹き飛んだんです!自分のやりたいことを思い出せたんです!」
違うのは、君は必死になって思い出して…私は必死になって忘れたことか。
「ありがとう…でも…私は…。」
「社内の嫌われ者ですか?私はそうは思いません…アナタはとても素敵な人です。新田さんのこと…好きです。」
真っすぐ瞳で私の顔を見つめてくる…突然の若い女の子からの告白に私の考えは追い付かない。
「えっと…いつから?」
「わかりません!…けど…今日会えた時は奇跡だって思いました。だから…一緒に居たいなって思って…はっきり言うと…今日は新田さんに…だ、抱かれたかったんです!」
どうやら、私はまた色々な女性の気持ちに気づかなかったようだ。
「その…すまない。」
「謝らないでください…本当に鈍感なんですね!私の事…抱いてくれますか?」
「ああ。」
「じゃあ…始める前に…キス…してもらっていいですか?」
私は頷くと、彼女にゆっくりとキスをした。ファーストキスの様な唇が当たるだけのキス。
「キス…しちゃいましたね…なんだか照れます。」
これからもっと色々なことをするんだよと、思いながら私は彼女をベッドの上にそっと寝かせた。
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