45歳バツイチ男のモテキはラッキースケベから始まる。 (Page 7)

―――数時間後。

「あはははは!にっらさーんwごちそうさまでーすww」

「いえいえ…。」

 私は、2人分の会計を済ませ酔った早瀬さんを連れて店を後にする。

 彼女が気になっていたお店は、値段もリーズナブルで量も満足、何より酒の種類が多かった。
 
 最近は家飲みが主流だった私にとっては久々の楽しい食事になるはずだったが、つい酒の知識で饒舌になって彼女に色々呑ませ過ぎてしまった。

「にっらさん…おさけつよいんですねー。みなおしましたー…ととっ!」

「ああ…危ない!私に掴まって下さい。」

 早瀬さんの顔は、真っ赤になり足取りもおぼつかない…私が彼女と荷物を支えて歩くことにした。

(…とりあえず駅に向かおう。)

 出るところは出て、引っ込むところは引っ込んでいる引き締まったスタイルの早瀬さんから伝わってくる体温は熱いくらいだ。押し付けられてくるその胸の感触も決して悪いものではない。
 
(…はたから見たらこんなの…私が若い女の子を酔わせて無理矢理連れて行こうとしているだけにしか見えないじゃないか。)

 私は、早瀬さんとの選択をどこかで間違えたんじゃないかと不安になる。彼女はあくまで会社の同僚だ…それ以上の関係になりたいなど、微塵も思っていない。

 先ほどの食事の席で聞いた話。

「私、プロになってダンススクールを開きたいと思ってるんです。」

 学生時代からの夢を親に反対されて今の会社に就職した事。
 
 退職したのもその夢を諦めきれない自分がいたことに気づいたからだという事。

 彼女の置かれた状況に共感と同情はするが…それだけだ。まずは会社の同僚に見られたら、また噂されそうなこの状況をなんとかせねば。

 駅に着いた私は、早瀬さんをベンチに座らせてから、タクシーを捕まえることにした。タクシーならば家さえわかれば後は大丈夫だろう。
 
「早瀬さん。今から駅でタクシーを捕まえますから、家の場所教えてもらえますか?」

「…んん?私の家ですか?無いですよ。」

「はい…?」

「父親に会社を辞めたことを伝えたら実家に帰って来いって言われて…。マンションの契約も切られちゃいましたwだから~今日も行くとこなかったんですよ~」

 そのとき、私は気づいた。

 『求められるのは二択。間違った選択肢は選べないです!』

 この占いは、『間違った選択肢を選んではいけない。』ではなくて

 『間違った選択肢を選ぶことができない。』だったのだと。

 私は、半ばあきらめた気分で…捕まえたタクシーに自分の自宅の住所を告げた―――。

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