45歳バツイチ男のモテキはラッキースケベから始まる。 (Page 6)

【早瀬 来海(はやせくるみ)25歳/失業中/踊りたい】

 香穂子さんの件があってから1ヵ月ほどたったが、その間ずっと同じ問題を抱えている…ラッキースケベが続いているのだ。
 
 若い人なら、ラッキーの一言で済ませられるかもしれないが、こっちは40も後半だ。
 
 『求められるのは二択。間違った選択肢は選べないです!』
 
 そうだろうな…1つ選択を間違えればそのまま通報されてもおかしくない。
 
 もし、ラッキースケベに遭遇することを止められないなら、せめて捕まらないように聖人の様な行動を心掛けよう…。
 
 (…明日から連休だし女性がいっぱいの満員電車を避けるためにも、どこかで夕飯を食べて帰るか。)
 
 そんなことを考えながら1日をダラダラと過ごした私の耳に、早瀬さんが退職をしたという噂が耳に入ってきた。
 
 1ヵ月前…いつもの私に比べれば、彼女が会社に残れるように前向きな努力をしたと思うが、こればっかりは本人の気持ちの問題なので仕方がない…。
 
「ん?…あれは…。」

 帰り道、駅前の繁華街で夕飯を何にするか決めかねている私の目に、車輪のついた大きな旅行鞄を引いている見知った女性が飛び込んできた。

 いつもと雰囲気が違う…黒のロングスカートに薄い水色のシャツを合わせたスタイル、そこには私服に身を包んだ早瀬さんの姿があった。羽織っている上着に少しビンテージ臭が漂っているのは、彼女の趣味の部分なのかもしれない。

「早瀬さん?」

「え?あっ!新田さん!奇遇ですね…こんな時間に会うなんて。」

「ええ…ちょっと理由があって、遅く帰ろうかなって。」

「そうなんですか?あ!じゃあご飯に付き合ってもらえませんか?」

 外食はいつものことだから構わないのだが、今の私はできる限り女性との接触は避けておきたい…。

「折角ですが…。」

「実は私…会社辞めちゃったんです。そのこともあって…新田さんとお話したいなって思ってたんですよ。」

 途端に断りにくくなる…。私は、何も知らないふりをして話を合わせることにした。

「ええ…そうだったんですか…じゃあ、ご飯だけ…行きますか?」

「やった!じゃあ行きましょう!私、しばらくお休みですし、新田さんも明日はお休みですよね?気になってるお店が合ったんですよー。」

 なんか、とんとん拍子に早瀬さんと食事に行く計画が立てられていく。まぁ、食事くらいなら…。

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